ヒットメーカーの舞台裏

2012年6月13日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 外径15ミリのスチールパイプを曲げ加工したシンプルなデザインが眼を惹く。パイプの先端に近いところに、色の再現性で最高ランクの性能をもつ薄型LED(発光ダイオード)が2個装着されている。3万9900円と高価だが、2011年12月の発売から3カ月で初期ロットを完売するという好調な出足となった。

先端部分の小さな窪みが発光する。

 接触センサー方式のスイッチが、パイプの上部先端に装着されており、明るさは2段階に切り替えられる。内蔵する電子回路にはマイコンも搭載され、点灯する際はふんわりと徐々に明るくなるよう制御している。

 光源の直下だけでなく広がりをもたせた光は、より自然光に近く、それぞれの対象物本来の色を忠実に再現できるという。そうした色の再現性は、国際基準である「平均演色評価数」(Ra)という指標で示される。「ストローク」の光は、Raが90以上の最高ランクに入っており、美術館やデザインなどの現場で使われる照明と同等の性能だ。

 消費電力は最大で11ワットであり、毎日6時間使用しても電気代はおよそ月40円と、LEDならではの省エネ性能をもつ。LEDの寿命は、同様の使用時間で27年間に及ぶ。スッキリした本体は視界を邪魔しない。そうした機能も満たしたユニークなデザインは、2011年の経済産業省「グッドデザイン賞」と、世界的に権威のあるドイツの「レッドドットデザインアワード2012」を受賞した。

米アップル製品に触発される

 神奈川県小田原市に拠点を置くビーサイズは、富士フイルムの設計技術者だった代表取締役の八木啓太(29歳)が11年に立ち上げたばかりの家電ベンチャーだ。ストロークは開発から部品発注、組立て、販売業務に至るまで、取締役であり従業員でもある八木が独りでこなした。

 起業は高校生のころに抱いた夢だった。当時、八木は自宅にあった米アップルのパソコン「iMac」などに触発され、創業者のスティーブ・ジョブズのように「カッコいい電子機器をいつかは自分の手で」と、夢を膨らませていった。その実現に向けた歩みは、あくまで周到だった。

 大阪大学では学部、大学院とも電子工学を専攻した。まずは電子回路の設計ができなければ、エレクトロニクス製品はつくれないと考えたからだった。勉強はラクではなかったが「何とか6年間食らいついて」頑張った。在学中は、「カッコいい」モノをつくるため、デザインにも独学で取り組んだ。

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