2024年5月12日(日)

Wedge REPORT

2020年6月8日

2022年2月開催予定の北京冬季五輪の存在

 加えて日本側が東京五輪開催に向け、中国側と密かにパートナーシップを結びたい理由として、2022年2月開催予定の北京冬季五輪の存在もある。

 前出の事情通は、こうも続けている。

 「延期になった東京五輪が閉幕してから、北京冬季五輪の開幕までは半年足らず。新型コロナウイルス対策の面はもちろん、大会スポンサーのバッティングによって共食いを回避するようにしなければならない点など意見交換を重ねなければ成り立たない重要事項はかなりある。そうした諸々の背景と照らし合わせれば、日本側は東京五輪開催を巡って中国と協力関係を築く筋道を立てておきたい。

 それに何より日本と中国は共にこれだけの短いスパンの間で、まだコロナショックが残る可能性もある中、五輪を開催するという国家プロジェクトを共有している。日本側としてはIOCにもそれなりの発言権を持つ大国・中国を〝味方〟にしておくことで何とか東京五輪の中止だけは回避し、強行開催へと漕ぎ着けたい算段もどうやらあるようだ」

 政府は新型コロナの感染拡大などで当面見合わせとなっている中国の習近平国家主席を国賓として今秋にも訪日させようと調整を進めていたが、自民党外交部会などから反発の声が拡大したことでとん挫。中国の香港に対する国家安全法制新設を非難するとともに、中国公船が5月に沖縄県・尖閣諸島周辺で日本漁船を追尾した行動についても厳しく批判するなど与党内部は政府への圧力を強めている。このような現状があるにもかかわらず、大会組織委員会と政府内部に五輪開催を巡っては中国と歩調を合わせようとする〝ダブルスタンダード〟があるとしたら由々しい問題だ。

 どっちつかずの八方美人の外交こそ日本は欧米から愛想を尽かされ、したたかな中国にも足元をみられかねないだろう。ともあれ来年もコロナ禍が続く危険性がある上、中国に媚びへつらってまで開催しようとしている東京五輪は民意を反映しているとは残念ながら到底思えない。

  
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