Wedge REPORT

2020年6月8日

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(smshoot/gettyimages)

 本当に開催できるのだろうか。コロナ禍にあえぐ中、そう疑問に思っている人は相変わらず少なくないはずである。来夏に開催延期となった東京五輪・パラリンピックのことだ。緊急事態宣言が解除となったタイミングもあり、それまで鳴りを潜めていた東京五輪に関連する話題がここ最近は各方面から再び出始めている。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会と政府、東京都が新型コロナウイルスの長期的な流行や経費削減に対応するため大会の簡素化に向けて動き出し、国際オリンピック委員会(IOC)との話し合いで見直し案を検討していると報じられた。しかし前向きな話題とは対照的に、厳しい現実を受け入れなければいけない可能性も当然ながら高い。

 6日にはフランスの公共ラジオでIOC幹部のピエールオリビエ・ベケール委員が開催可否の最終判断を「来年春になるだろう」とし、その際に下される結論は「実施か中止かのいずれか」で延期はないとの認識を示している。さらにIOCで大会準備作業を統括するジョン・コーツ委員長に至っては先月21日付の豪紙「オーストラリアン」で「新型コロナウイルスの感染収束がなければ、東京五輪の開催はありえない」と厳しい言葉を残し、早々と今年10月頃に開催可否の判断を行う方向性を打ち出したという。

 日本側にとってIOCの有力者たちが揃いも揃って開催可否の行方やその決定時期について、それぞれの意見や見込みを口にする流れは正直なところ好ましくない。大会開催まで1年以上もある段階から「中止」の可能性が浮上し、そのレールを敷かれてしまう流れだけは避けたいからだ。いずれにしても政府と東京都、それに大会組織委員会に「中止」の選択肢を受け入れるつもりは今のところ毛頭ない。

 是が非でも開催へと突っ走りたい日本側は大会組織委員会と政府を軸に一部から〝禁断の合体〟までもプランとして持ち上がっている。それが中国との接近である。日本国内のすう勢から考えればハレーションを引き起こしかねないだろう。しかしながら意外にも日本側には外交戦略として中国との強い協力関係が構築できなければ、東京五輪の開催及び成功には至らないというビジョンを描いている人物が複数いるというから驚きだ。

 大会組織委員会に近い事情通の1人は「あまり大きな声では言いたくないが」と打ち明け、次のように続ける。

 「何だかんだと言って中国にソッポを向かれてしまったら、東京五輪は苦しくなる。このように考えている大会組織委員会幹部、そして政府側の要人たちは1人や2人の人数ではない。代表選手に関しても多くの種目でメダル候補を揃えており、中国が参加することで大会自体のレベルアップに大きな影響を及ぼす。無観客開催でないことを前提とすれば、五輪観戦のために来日する中国人のインバウンド需要の復活も無視できない。〝中国寄り〟になろうとしている彼らは、そう見込んでいる」

 中国政府は国内の武漢から新型コロナウイルスの感染が広まったとされ、その初動対応がずさんだったとして欧米諸国から批判が集中。さらに香港への国家安全法制の導入を巡っても、中国政府は米国や英国などから厳しく批判する共同声明を発せられる見込みで欧米との対立が深刻化しつつある。

 ところが、こうした流れの中において日本は一部通信社の報道によると、この共同声明への参加を打診されながらも拒否していると報じられるなどナゼか中国を気遣うような〝水面下の疑惑〟が明るみに出ている。現時点で真偽のほどは不明で政府側の発言を待ちたいところとはいえ「火のないところに煙は立たない」のは鉄則だ。このような報道が出てくること自体、やはり中国との関係改善をどこかで目指そうとしている日本側の姿勢の現われだろう。

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