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2020年5月26日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

(Chansom Pantip/gettyimages)

 コロナ危機が長期化する中で資金力が弱く経営体力のない中堅・中小企業が倒産の危機に瀕している。そうした企業を取引相手に融資を含めた相談相手になっている地域の金融機関の第一勧業信用組合(東京都新宿区)の新田信行理事長に、未曽有のコロナ不況の中で取引先にどう対応しようとしているのかを聞いた。

 新田 信行(にった・のぶゆき)1956年生まれ。1981年に第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。みずほフィナンシャルグループ与信企画部長を経て、2011年にみずほ銀行常務執行役員。13年から第一勧業信用組合理事長。千葉県出身。

Q 現状をどう見ているか

新田理事長 金融を40年やっているが、経験したことのない状況だ。取引先の半分くらいの企業から返済猶予などの相談が来ている。このため職員は疲れてパンク気味になっているが、ゴールデンウィークも多くの店が休みなしで対応してもらった。

Q 取引先の状況は

新田 4月は何とか持ったが、緊急事態宣言が延長されて、5月、6月と売上がゼロになったりすると本当に苦しくなる。経営者を激励し、当面の資金繰りを確保するために、コロナ特別枠をつくって低利で融資するようにしている。雇用調整助成金などはまだ届いてない状況なので、早く運転資金などを届けようと手続きを短くして申し込みを受けてから短期間に融資を実行している。

Q 信用組合ならではの取り組みは

新田 信用組合は組合組織なので、単に資金を融資するだけでなく、組合員や地域を繁栄させるのが本来の組合の基本的な目的だ。大変な危機に遭遇しており、みんなで力を合わせてこの危機を何とか乗り切りたい。コロナで企業をつぶしたくない覚悟でやっているので、取引先もそのつもりで相談に来ている。今回の危機は、もちろん自助努力は必要だが、公的な支援の公助、会員組織の協力による共助の3つそろってないと中小企業は生き延びられない。

 現在、第一勧業信組では、取引先の中小企業を励まそうと「コロナに負けるな地域支援キャンペーン」を行っている。第一勧業信用組合だけで組合員が4万人いる。本店や支店の中のスペースに商店街で売っている商品を陳列して、ほしい人はその商品を注文したり、飲食店の食事券を買ってあげたりして、少しでもお役に立ちたいと思っている。

 すでに行った具体的な取り組みでは、受注先の百貨店休業で仕事が減った婦人服の縫製メーカーが、使っていた生地を活用して足りないマスクを製造したが販路がなかった。そこで全国にある連携している信用組合につないだら、多くの注文が入るようになり感謝されている。

Q 相談ではどのようなものが多いのか

新田 最も多いのが資金繰りの相談で、期限の来た返済の猶予には積極的に応じるようにしている。また、売上が激減したりゼロになって困っている企業の運転資金の融資にも、低利で提供するようにしている。しかし、先行きが見えない中で、どうやって返済していくのかという問題もあり、売上が出ないと今回の運転資金の融資を返済するのに長期間掛かる計算になったりすることになる。このように借りても返済の当てがない企業もあり、本当は借りたくないはずだ。

 第一勧業信組では、無担保で経営者の人物評価などを重視して職域や地域のコミュニティに属している人に対して低利で融資するコミュニティローンの実績があるので、このローンのコロナ特別枠を新設し、50万円から100万円を融資するケースも増えている。大銀行ではできないが、信用組合ならすぐに出せるので、喜ばれているようだ。

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