オトナの教養 週末の一冊

2020年5月2日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 「相続のことは頭では分かっていても、他人事と思って準備しない人が多いが、トラブルを防ぐためにも事前に真剣に考えてもらいたい」と話すのは、『ホントは怖い相続の話』(パル出版)を上梓した、相続・事業継承専門「税理士法人レディング」の木下勇人代表だ。これまでに3000件もの遺産相続に関った相続専門の税理士として、相続でもめたくない人のために、事例を挙げながら分かりやすく解説している。

(bee32/gettyimages)

増え続ける調停件数

Q どういう人にこの本を読んでもらいたいか。

木下代表 これまでに税理士向けの本は出していたが、どうしても一般の人向けに出したかった。相続というとすぐに節税対策だと思いがちだが、節税を最優先すると、もめごとが起きやすい。これまでに遺産分割をめぐって、弁護士を立てて裁判沙汰になるケースをいくつも見てきた。遺産相続は関係ないという人も、いつ自分が当事者になるかもしれないので、当事者になったつもりで読んでもらいたい。「ハウツー」本では書いていないような相続対策の裏話も盛り込んだので、なるほどと思うことが多々あるはずだ。

Q 遺産相続に絡んだ家庭裁判所への調停申請件数は増えているか。

 最高裁判所が発表している数字を見ると、2018年度に遺産分割に関しての調停事件となった件数は2万4801件で、この数年はじりじりと増加傾向になっている。表に出てくるのは調停の申し立て件数の数字だが、その前に弁護士が入ってトラブルを解決しているわけで、もめている件数は調停件数よりはるかに多いはずだ。遺産相続をめぐっては権利の主張が激しくなっていることで、調停件数も増えている。

Q 遺言を書かない人が多いようだが、どうしてなのか。

 亡くなった人に対して遺言を書いている割合は、公正証書遺言と自筆証書遺言を合わせても遺言状は全体の10%にも満たない。なぜ書きたがらないのかというと、死んだ後のことは考えたくない、面倒くさいとか言って自分の財産を誰に渡すかについて決めたがらないため、結局、書かないで放っておくことが多くなる。遺言を書いておけば、分割をめぐってもめることはなくなる。

Q 遺産をもらう側の立場と、渡す側の立場で心理状態が違うようだが。

 もらう側(自分が子供)の立場の場合は、兄弟姉妹がいると「いくらもらえるかな……」と腹の探り合いをするものだ。しかし、歳を取って渡す立場(自分が親)になると、「自分の子供がもめるはずがない」と楽観的に思いがちで、自分の身に置き換えて考えられないので、遺言の作成もなかなか進まないのが現状だ。

 2019年に金融庁の報告書の中で、「老後世帯は2000万円の資金が必要にある」などと言われたこともあって、老後を暮らす上での不安が高まり、親からの贈与を当てにしている子供世帯が多い。このため、遺産相続では少しでも多くの財産をもらおうとしてトラブルになるケースが多くみられる。

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