海野素央の Love Trumps Hate

2020年4月22日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

ミシガン州都ランシングの州議会前で、自宅待機命令に抗議するトランプ支持者(REUTERS/AFLO)

 今回のテーマは、「トランプ流『抗議活動家の利用法』」です。米国では新型コロナウイルス感染で死者数が4万人を超える中、州知事が出した外出禁止令に対する抗議運動が起こりました。これに関してドナルド・トランプ大統領(73)は、ホワイトハウスが打ち出した感染拡大阻止の新ガイドラインに従わない抗議活動家を非難するどころか、自身のツイッターに彼らを扇動する投稿をしました。そこで本稿では、トランプ大統領がどのように彼らを利用しようとしているのかについて述べます。

抗議活動のタイミングと特徴

 なぜ、抗議活動家はこのタイミングで外出禁止令に抗議する運動を起こしたのでしょうか。トランプ大統領の経済活動再開のための新ガイドライン発表と時期が一致している点に注目です。背後で誰かがトランプ氏を助けるために、陰謀を企んでいると疑いたくなるようなタイミングです。

 米政治専門サイト「ポリティコ」によれば、中西部ミシガン州では「ミシガン州保守連合」及び「ミシガン州・フリーダム・ファンド」といったトランプ支持の保守系団体が抗議運動を主催しました。後者はトランプ政権の教育長官べッツィ・デボス氏(62)の家族と関係があります。となると、今回の抗議運動はトランプ政権ないし陣営と裏で結びついている可能性があります。

 抗議運動には、2010年米中間選挙で旋風を引き起こした保守系の市民団体「ティーパーティー」の旗を持って参加している活動家の姿が映像から確認できます。ティーパーティーの信条は、「個人の自由」です。彼らは「外出禁止令は個人の自由の権利を侵している」といいたのでしょう。

 これまで筆者はトランプ大統領が支持者を集めた集会に参加してきましたが、ティーパーティーの支持者を目撃しています

 トランプ支持の旗を身にまとったり、トランプ陣営のスローガン「米国を偉大なままに」が印刷された赤い帽子を被っている活動家も抗議運動の中にいます。こうなると、単なる抗議運動というよりも、むしろトランプ支持者による「政治集会」ないし「選挙集会」と言った方が正確かもしれません。

トランプの狙い

 抗議活動家は、人と人との距離を6フィート(約183センチ)あけるというソーシャル・ディスタンス(対人距離の確保)のルールを守っていません。ホワイトハウスのコロナ対策チームのアンソニー・ファウチ米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長は、抗議運動がコロナ感染者数の増加を招くと、強い懸念を示しました。

 にもかかわらず、トランプ大統領は連日行われるホワイトハウスでの記者会見で、「抗議活動家は私のことが好きだ」「彼らは責任を取れる人たちだ」と擁護しました。加えて、自身のツイッターに「ミシガン州を解放せよ」「ミネソタ州を解放せよ」「バージニアを解放せよ」と連続して投稿し、国内の反乱を助長するメッセージを発信しました。

 トランプ大統領には抗議活動を利用して、州知事に圧力をかけて、早期に経済活動再開を実現させる狙いがあるとみてよいでしょう。ただ、トランプ氏の思惑はそれのみではないようです。

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