海野素央の Love Trumps Hate

2020年3月31日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「脚光を浴びるクオモニューヨーク州知事」です。新型コロナウイルス感染拡大と戦う東部ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(62)の評価が高まっています。その理由は一体どこにあるのでしょうか。本稿では、ニューヨーク市クイーンズ区出身のクオモ知事とドナルド・トランプ大統領(73)の記者会見を比較分析します。

クオモNY州知事(REUTERS/AFLO)

データと緊迫感

 トランプ大統領とは異なり、クオモ知事はスクリーンにデータを映し出し、緊迫感あふれる記者会見を行っています。

 例えば、クオモ氏は3月24日の記者会見で、86万1700のサージカルマスク、35万3500の手袋、14万5122の防護服及び7万8528の医療用フェイスシールドを、米連邦政府に要求しました。その際、これらの数字を全てスクリーンに出して、ニューヨーク州では緊急を要する事態が発生しているというメッセージを効果的に発信しました。

 加えて、クオモ知事は「3万の人工呼吸器が必要だ」と語気を強めて語り、14日以内の支給を連邦政府に迫りました。クオモ氏によれば、米連邦緊急事態管理庁(略称FEMA,フィーマ:Federal Emergency Management Agency)が人工呼吸器を4000台支給しました。しかし、その数字は不十分であると主張して、「死亡する人を2万6000人も選ばなければならない」と述べて、州民の生死を分かつ究極の選択判断に遭遇していることをうち明けました。

 続けて、1台の人工呼吸器を2人のコロナ患者に装着して対応していることも明かしました。

 クオモ知事は数字を効果的に使い、米国民に自然な口調で語りかけ、しかも緊急性に訴えることができる点が優れています。実際、クオモ氏は記者団に対して「事実、データ、数字、見通しに基づいてコロナ対策に取り組んでいる」と率直に語っています。

優先順位と警告

 言うまでもありませんが、危機的状況下のリーダーは政策に優先順位をつけることが不可欠です。国民の生命が危険に直面している場合は、警告を発します。

 クオモ知事はトランプ大統領に対して、政策に優先順位をつけるように強く求めました。感染増加の州をスクリーンに映し出して、「ニューヨーク州の感染者数はカリフォルニア州の10倍だ」と強調し、まずニューヨーク州に人工呼吸器を優先して支給するようにトランプ氏に迫りました。

 さらにクオモ知事は、ニューヨーク州は他州のテストケース(先例となる事例)であると指摘し、「3週間後、4週間後、あるいは6週間後にニューヨーク州のようになる可能性がある。ニューヨーク州は他州の未来である」と、米国民に警鐘を鳴らしました。クオモ氏は、ホワイトハウスの記者会見で楽観的な発言を連発するトランプ大統領とは全く異なったリーダーシップを発揮しています。

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