海野素央の Love Trumps Hate

2020年4月18日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「3つの特徴を持つトランプのコロナ記者会見」です。ドナルド・トランプ米大統領はほぼ連日ホワイトハウスで新型コロナウイルス対応の記者会見を開いています。本来であるならば、全米におけるコロナ感染者数及び死者数が増加する中で、記者会見はその対応に焦点が当たるべきです。

 ところが、トランプ大統領自らがスポークスマンになり、司会者も兼ねて行う記者会見は、違う方向へ進んでいます。そこで本稿では、コロナ対応に関する記者会見の3つの特徴について述べます。

16日、ホワイトハウスでトラック運転手に感謝するイベントを開催したトランプ大統領(AP/AFLO)

セレモニー(儀式)

 第1に記者会見は、まるで偉大な大統領を褒めたたえる「セレモニー」のようです。記者会見では、マイク・ペンス副大統領、スティーブ・ムニューシン財務長官などの閣僚及び米軍関係者がトランプ大統領のリーダーシップに感謝の意を表してから、各自が用意した原稿を読み上げます。大抵の原稿には「大統領のリーダーシップのお陰で」という言葉が含まれています。

 このしきたりを守らない人物はどうなるのでしょうか。

 ホワイトハウスのコロナ対策チームのアンソニー・ファウチ米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長は、「(感染増加のペースをゆるやかにする)緩和戦略を早く実施していれば、より多くの生命を救えただろう」と発言しました。 

 ファウチ所長は初動対応の遅れはなかったと主張するトランプ大統領と相反するコメントをしました。その結果、トランプ支持者から猛反発を買い、解任を求める声が上がっています。

選挙運動

 第2に記者会見は、選挙運動の色が濃いもになっています。トランプ大統領は新型コロナウイルス対応の成果を繰り返し強調します。有権者に高い危機管理能力を示すことができれば、投票日まで7カ月を切った大統領選挙を有利に戦えるという計算が働いているからです。

 トランプ氏は記者会見で、1月21日に米国で初めてコロナ感染者が報告され、10日後に中国への渡航制限を発令したと語気を強めました。「スピード感」を持って、対応したと言いたいのです。200万件のコロナ検査を実施し、検査件数で世界をリードしていると自画自賛もします。

 その際、トランプ大統領は事実上の民主党大統領候補となったジョー・バイデン前副大統領の批判を忘れません。バイデン氏が中国への渡航制限を出したトランプ大統領を、「人種差別者」「外国人嫌い」と呼んだと非難しました。加えて、オバマ政権下で豚インフルエンザ対応の責任者であったバイデン氏は、1万7000人もの死者を出して失敗したと指摘しました。

 コロナ感染拡大のために、支持者を集めた大規模集会を開催できないので、全国に生中継される記者会見を活用して支持者にメッセージを発信していることは確かです。つまり、トランプ大統領はホワイトハウスの記者会見室やローズ・ガーデンを集会場に置き換えて、選挙運動を行っているといえます。

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