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2020年5月16日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

羽田空港に駐機するANAとJALの航空機(Aviation Wire/AFLO)

 コロナ禍は航空業界にも激震を与えている。緊急事態宣言による外出の自粛要請や海外への渡航制限により、全日空(ANA)と日本航空(JAL)は利用客が1~3月期は国内、国際路線ともに空前の減少を記録、当面は金融機関からの資金借り入れでしのぐ構えだが、利用客の大幅減が夏休み以降にまで続くと、経営の屋台骨を揺るがす事態にもなりかねない。

国際線は9割減便

 今年初めまではインバウンド需要のさらなる増加を期待していた航空大手2社は、コロナ危機で3月以降、経験したことのない未曽有の減便、運休を迫られている。全日空の国際線は、6月15日までは計画運航便数の9割減、国内線は4月が6割減、5月が8.5割減となっている。政府の外出自粛要請が徹底された5月に入ってからは、乗客がほとんど乗ってない便もあったようだ。

 日本航空も国内線は5月18日から月末まで72%減便、国際線も5月は94%減便する予定で、同月はニューヨーク、ハワイ行きは全休となる。国際線は就航している主要空港で到着しても2週間の隔離を求められる状況が続いており、利用客が以前のように回復するには世界的な感染が終息しない限り難しい情勢になっている。

 一方、国内線については14日に東京都、大阪府、北海道などを除く多くの県で緊急事態宣言が解除されたことから、少しずつ回復するものとみられる。両社は6月以降の運航予定は感染の状況を見極めて決める方針だが、稼ぎ時の夏休みシーズンにまで外出自粛要請が継続されると、夏場も失速することになりダメージがさらに大きくなる。

毎月1000億円消える

 こうした情勢を受けて両社の2020年3月期の決算は厳しい内容となり、特に同年1~3月期は利用客の大幅な減少により両社ともに赤字となった。全日空は通期決算で売上高が1兆9742億円と2兆円を割り込み、経常利益は前年度比973億円減の593億円だった。発表したANAホールディングスの福澤一郎取締役は「第4四半期は過去最悪の数字」と述べたほど。また両社は20年度の業績見通しについて、予想できないとして発表しなかった。

 日本航空は売上高が5.1%減少の1兆4112億円、経常利益は38%ダウンの1025億円だった。両社の財務内容を比較すると、20年3月期の有利子負債額をみると、日本航空が1917億円なのに対して全日空は8428億円と4倍以上多くなっており、これが足かせとなってきそうだ。

 路線で見ると、この数年は両社の財務内容を比較すると、この数年、中国、アジア、ハワイなど国際線を中心に拡大路線をとってきた全日空の方が苦しい。その象徴となったのが昨年の5月に日本航空のドル箱路線だったハワイ路線に、大型機A380機を投入したことだった。3機発注して現在2機保有している。520人もの乗客を運べる大型機だが、現在、全日空はハワイ路線を運休させている。

 価格はカタログベースで1機1500億円もする。残る1機については受領時期を遅らせるなどして、少しでも経費負担を減らそうとしている。航空機のリース代金などで、毎月1000億円もの現金が必要になっており、同社は4月から客室乗務員の7割に当たる6400人を対象に一時帰休させていたが、5月末をめどにこの一時帰休をANAグループ全体の4万2000人まで対象を拡大するなど、人件費の削減に力を入れている。

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