2024年12月10日(火)

Wedge REPORT

2020年2月13日

 地方の大学生で国家公務員総合職(いわゆるキャリア職)の難関試験に合格したにもかかわらず、地元の県庁や市役所などに就職する傾向が目立っている。2019年度の大学別合格者数で10位に入った岡山大学の場合、55人(女性26人)の合格者のうち、実際に中央官庁に就職したのは10人以下だった。隣の広島大学では37人合格したが「霞が関」でキャリア職となったのは6人しかいない。

岡山大学津島キャンパスのシンボル時計台(岡山大広報提供)

試験を受けるのは力試し

 ではそもそも何のためにわざわざ受験するのか。岡山大学で国家公務員総合職の試験を受ける傾向が強まってきたのは15年ほど前からで、この5年くらいで合格者が大幅に増加している。19年度の合格者55人のうち、大学卒の合格者が49人で大学院卒を除いた大卒での合格者数では6位にランクアップする。

 受験するのは同大学の法学部、経済学部、文学部、農学部、環境理工学部の学生たちだ。中心となるのが法学、経済、文学部の3学部(学生総数約600人)で、200人以上が受験しているという。その中で毎年40~50人の合格者を出して合格率は高い。

 しかし合格者の多くが東京には向かわずに、岡山県庁をはじめ、出身地の県庁や市役所に就職する傾向が強い。受験するのは「周囲の学生が受けているから、力試しのつもりで受けてみようか」くらいの感覚で、強い動機はないようだ。

 岡山大学・教育学生支援機構の坂入信也教授は「ここの学生は真面目でコツコツやるタイプだ。地元志向が強く、総合職試験に合格しても面接に行かない学生が多いが、国立大学の卒業生でせっかく合格しているのだから、もう少し中央での就職を目指してほしい気持ちはある」と話す。

大学は受験生を支援

 大学としても合格率を上げるために支援している。岡山大では国家公務員受験講座を設けて、希望者は3年生の6月から、本来の授業が終わった夕方から、この講座の授業2~3時間を1年間ほど受講する。長年講座を開設しているため、学生の方も先輩などからのアドバイスなども受けて受験対策も効率的にできるようになっているという。講座は外部の業者が大学内で行い、模擬試験などもあり、いわば国家公務員試験合格をターゲットにした学内予備校のようなものだ。

 広島大学では、合格者が東京の中央官庁に面接に行く場合には1人当たり5万円ほどを「官庁訪問支援金」として補助するなど経済的支援もしている。中央官庁の面接は1週間ごとの3回ほど受けなければならず、その期間中に東京に滞在するとなると3週間もいることになり、その宿泊代もかかる。

 また、面接のたびに東京と広島を往復するのも費用がかさむ。同大学のキャリア支援グループの渡部淳副グループリーダーは「『霞が関』に就職しようと思って面接を受ける学生にとって東京往復はかなりの負担になるので、大学として支援している。面接を受けに行く学生の中には、安価なカプセルホテルに宿泊して面接に臨む学生もいたりして、地方の学生が中央官庁に就職するためにはハードルがある」と実情を話す。


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