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2020年2月18日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 国の政策を決める中央省庁が集まる「霞が関」がいま「ブラック」職場と化し、エリート職場とみられていた国家公務員キャリア職の離職が相次いでいる。「霞が関」の職場環境の実態について、昨年の9月末に厚生労働省を退職した前医療政策企画官の千正康裕氏(44歳)にインタビューし、外から職場を変えようとする本音を聞いた。

(kanzilyou/gettyimages)

業務プロセスの見直し

 千正氏は2月4日、AbemaTVにも生出演し、霞が関の職場環境を変える必要性を強く訴えるなど東奔西走の毎日だ。「これは単に官僚の労働問題ではなく、『霞が関』が疲弊すれば、国の政策の立案、執行の機能が壊れて、国民に迷惑がかかるという深刻な問題だ。官僚の仕事は一般の人には内容が見えにくいが、例えば厚労省の場合でも、年金、介護、医療、保育、働き方など国民の生活に密着した大事なことをやっている」との思いから、改革を叫んでいるという。

 職員が健康や家庭を壊したり、若手の離職が増えている状況を変えるためには働き方を変える必要があるが、「業務プロセスを見直し、国民生活と直接関係のない作業を徹底的に減らし、必要な作業であっても、役人でなくてもできるものは外注化を進める必要がある」という。

 こうした観点から、実際に厚労大臣への説明や国会答弁作成などの内部手続きのペーパーレス化などの取り組みを進めている。しかし「役所だけで根本的に解決できない国会との関係で減らせない業務の負担が極めて大きい。『永田町』(政治)と『霞が関』(行政)との関係は、重要な取引先と下請けとの関係に通じるものがあり、『永田町』の理解を得ながら仕事のやり方を変えなければならない」と主張する。

重荷になる国会業務

 中でも、「深夜に緊急的な仕事の入る国会関連業務を減らすことが最重要だ」という。

 「国会の質問通告の日時を公表することにより、各議員の通告は与野党の申し合わせでは委員会の2日前の正午までに行うことが原則とされているが、実際には全く守られていない。前日の夕方から夜にかけて行われるのが通常であり、内閣人事局の調査では、ある委員会においてすべての議員の質問に通告が完了する時刻は平均21時ごろである。その時間から翌日朝の委員会に向けて答弁を準備していたら深夜残業は避けられないので、委員会の質問通告の早期化が不可欠である。

 ただ、それを実現するためには、そもそも委員会日程を計画的に決めなければならない。現状では、委員会日程そのものが政治的な取引の対象になっているので、与野党間でぎりぎりまで調整した結果、前日になって翌日の委員会日程が決まることもある。これでは、質問者の議員が頑張っても早く通告することは難しい」と話す。

 「例えば、通常国会は1月に召集され、6月まで150日間の会期があるが、冒頭から会期中にどの法案が提出予定なのかは見えている。この法案についてはいつどのくらいの時間審議をして、いつ採決する、といった具合に、本来あらかじめ日程を決めておくことができるはずだ。そうすれば、国会議員も役所も計画的かつ効率的に準備ができる。質問する議員の側も急に日程が決まるので、質問案を徹夜して作ることもある。このような議員の働き方は、子育て中などの女性議員が増えない問題にもつながってくる。

 しかし、これを実現するには政治的なハードルがある。あらかじめ採決などの日程が決まってしまうと、法案を通したくない野党としては“攻め手”がなくなってしまうので、なかなか応じられない。野党に応じてもらうためには、与党側も日程を最初に決めてしまう代わりに、内容面で野党の少数意見を必要に応じて取り入れるような工夫が必要になるかもしれない。今のやり方は、長年の国会運営の中での与野党の均衡点であり、変えることは与野党双方にとって難しい面があり、話し合いには時間がかかるだろう」という。

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