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2020年2月21日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 新型コロナウイルスの感染者が増え続ける中、日本郵船グループの郵船クルーズが運航している大型クルーズ客船「飛鳥Ⅱ」(乗客872人)は、3月に予定している日本周辺のクルーズツアーを中止せず行う。

 また4月2日に出発予定の103日間の世界一周クルーズについても、現段階では、乗船日より14日以内に香港・マカオを含む中国への渡航歴がある、同日以内に発熱(37.5度以上)などがあった場合は乗船を断る一などの一定の条件をクリアした人のみ乗せる。

 乗船中に体調不良になった場合は、船医の診断によっては隔離か寄港地での下船もあり得るとしている。運航会社に対して、国土交通省や厚生労働省からツアー中止を求める要請などは現時点では来てないようだが、100日以上の長期間にわたり船内という密室状態にいることのリスク判断が問われそうだ。

飛鳥Ⅱ

あこがれの世界一周

 外国船籍の「セレブリティミレニアム」や「ノルウェージャンスピリット」といったクルーズ船は5月のゴールデンウィークに日本への寄港を予定していたが、コロナウイルスへの感染拡大を警戒して、すでに寄港中止を発表している。

 「飛鳥Ⅱ」の3月スケジュールは19日に横浜港を出発して2泊3日で清水(静岡県)を回るコースなど短期間の6コースを発売していた。このツアーは国内だけで短い期間なので、感染リスクは少ないが、問題となるのが予定している世界一周クルーズだ。

 この時期に隔年か5年に3回ほど行われており、富裕層向けのあこがれの人気ツアーで、中高年層のリピーターが多い。リピーターの中には、世界一周ツアーに乗船しているときに、1年先の一周ツアーを予約する人もいるそうで、ツアー経験した乗客によるクラブもあるほどだ。

 航行ルートは、横浜港を起点に神戸港で乗客を乗せて、シンガポールなどに寄港し、スエズ運河を通り、地中海に入りナポリなどに寄った後、ロンドン、ニューヨークを経由してパナマ運河を通過してホノルルに立ち寄って帰国するという長旅になる。客席は7クラスに分かれており、旅行代金は1人487万5000円~2875万円(税込み通常料金)とかなりの高額だ。1年前など早期に予約すると15%程度安くなるので、多くが早期割引を利用しているという。

看板商品

 「飛鳥Ⅱ」による世界一周ツアーは郵船クルーズの看板商品で、早くから「世界一周」クルーズを手掛け、日本人のクルーズ人口の拡大にも貢献してきた。料金が高いこと、リピーターが多いことなどから同社にとって売上増にもつながる。今回の世界一周は「飛鳥Ⅱ」を改修して最初のツアーだけに1年前の発売当初からこれまで以上に期待が高まっていた。

 同社としては感染のリスクを少なくする対策を最大限に取ることで、何とか出港にこぎつけたかったようで、小松崎有子・企画マーケティング部長は「安全な環境でお客様を迎えるようにしたい。現段階で予定通りの出港を決めているのは、総合的な判断からだが、今後、さらなる安全確保のために何ができるか検討したい」と述べた。

厳しい体調チェック

 新型コロナウイルスが蔓延するリスクが指摘されている時期だけに、郵船クルーズは乗客乗員の体調チェックには神経質になっている。同社のホームページを見ると、2月19日付で、乗船前、乗船中、寄港地でそれぞれの対応が書かれている。乗船時には、乗客に対して感染症についての質問票に署名して提出を義務付け、検温を乗船の1時間前に行い、結果が37.5度以上の場合は乗船できない。

 航海中は船内にサーモカメラを設置して乗客の体温を観察、寄港地での上陸、船に戻った際も入り口にサーモカメラを置いてチェックする。乗組員についても乗客と同じ渡航歴、体温点検を行う。航海中に予定している催し物については、状況により中止することもあるという。

 このツアーには船医が2名、看護師が3名乗船している。これまでの世界一周ツアーと同じ体制だという。船医は感染症の専門医ではないので、感染したかどうかの確定的な診断はできないようで、疑わしい乗客が出た場合は、寄港地で下船させて専門医に診断してもらうしかない。

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