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2020年5月16日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

公的資金の投入はあるのか?

 国内外でこれだけ急激に利用者が減ると、収入が激減するため資金繰りが厳しくなってくる。特に航空会社は飛行機材や燃料費、人件費など固定費の負担が重くのしかかる。全日空は、金融機関からの借り入れや融資枠の追加で計6000億円を調達するほか、危機対応融資の制度を活用し3500億円の確保に向けて日本政策投資銀行と協議しており、近く合計9500億円の資金手当てができる見通しを明らかにしている。

 日本航空も数千億円の資金の借り入れを検討しているが、数字は明らかにしていない。同社は2010年に経営破綻したが、3500億円の公的資金の提供を受けて、京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎えて経営再建を進め、12年には東京証券取引所に再上場を果たした。この間は監督官庁である国土交通省の行政指導もあり、全日空の拡大路線を横目に我慢の経営が続いていた。日本航空は破綻時の苦い経験から慎重な資金調達をしてきているため、資金繰りについては全日空より余裕があるようだ。

 4月7日に閣議決定された「緊急経済対策」では、航空会社に対する着陸料や税金(公租公課)の支払い猶予、危機対応融資、雇用調整助成金の助成率引上げなどが盛り込まれたが、いわゆる公的資金については言及されていない。今のところ両社は、政府からの公的資金の提供について日本航空は、頼らない姿勢をみせている。全日空も「自立経営を最優先に、自助努力に努める」として公的資金を受けることは否定している。

 航空会社経営に詳しい桜美林大学の戸崎肇教授は公的支援について「コロナの終息が夏以降までずれ込むと、確かに両社ともきつくなる。(その場合は)公的支援はあると思う。日本の場合、他国の場合と比べ、2社の存在は圧倒的であり、両社が揺らぐようなことになれば、人流・物流とも立ち行かなくなる。それに、10年のJAL破綻の時とは違い、今回は不可抗力なので、大義名分も立つ。ただ、あまり支援のことを積極的にいうと、他の業界からの突き上げもあるため、実際に支援を行うまではあまり具体的なことは政府として言及しないのではないか。

 世界各国で航空会社に対する支援、国有化、など抜本的な立て直しや淘汰の推進などが図られているが、こうした他国の政策が日本の航空会社の国際競争力を不当に弱めるようなことにならないよう、政府は常に国際航空市場の動向を広く視野に入れながら、JAL、ANA、そしてスカイマークなど国内航空会社のあり方を注視し、場合によっては積極的な支援をすることが望まれる」と指摘している。

物流インフラ担う航空貨物

 空輸送はこの数年、目覚ましい発展を遂げ、陸上、海上輸送と並んで物流インフラの大きな役割を担い、特にスピード感が重視されるモノの輸送には欠かせない。世界の各地で展開しているサプライチェーン(部品供給網)で製造された、半導体に代表される電子部品、自動車や精密機器関連部品の大半が空輸の形で日本から輸出入されている。このほか、農産物では香港やマレーシアの富裕層向けに空輸されているイチゴや和牛肉も増加、直近では新型コロナの感染予防のためのマスク、医療関連物資なども空輸されている。

 それだけに、経済活動に支障が起きるような航空会社の経営難は避けなければならない。国土交通省によると、18年度の国際航空貨物の取扱量は219万8012トンで、10年前と比較して6.8%伸びている。

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