2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2020年6月1日

(alphaspirit/gettyimages)

 深いため息をついた虎党の人たちは多かったであろう。阪神タイガースの藤浪晋太郎投手が先月28日の練習に遅刻し、二軍降格となった件だ。

 もしかすると浮上のチャンスをつかめるかもしれないと思われた矢先、また失態を犯した。3月27日には新型コロナウイルスの陽性反応が検出されて入院。当初は「勇気ある実名公開」などと称賛されたものの後に複数のチームメートとともに知人宅でのホームパーティーで罹患したことが明らかになり、全国的な感染拡大が顕著になっていた最中での行動とあって猛烈なバッシングを受けていた。退院後は24日に甲子園で行われた集合練習で打者5人を相手に4奪三振をマークする好投を披露するなど復調の兆しをみせ、開幕先発ローテ入りを期待する向きもあっただけに周囲の落胆の声は大きい。

 2013年のルーキーイヤーから3年連続で2けた勝利をマーク。将来のエース候補と目されながら近年は「イップス」とささやかれる制球難に苦しみ、満足な成績を残せていない。失態続きで三行半をつきつける球界関係者や球団OBも多く、その中からはトレードするべきだとの指摘も聞こえてくる。だが、実状は他球団からの評判も芳しくない。

 今年2月のキャンプ期間中、巷で頻繁に移籍候補の1つともウワサされるパ・リーグ球団のスカウトに「もし阪神から藤浪を交換相手とするトレードの打診があったら、どうするか」と率直にぶつけてみたことがある。そのスカウトはこれに大きく首を横に振りながら「NOですね」と断言し、こう続けた。

 「今のままでは残念ながらウチの球団に来たとしても不良債権で終わってしまいますよ。環境を変えても再生は厳しいと考えます。確かに藤浪君はポテンシャルの高い投手ですが、制球難が制御不能になり始めた4~5年前頃から伸びしろは消え去って劣化する傾向にある。ある日の試合で対戦相手から一喝されたり、あるいは一時の首脳陣と折り合いが悪かったり…。

 そういう様々な〝外発的要因〟があったとも言われていますが、どのような経緯があるにしても成長というものには最終的に自分自身がそうした困難を乗り越えられるか否かにかかってくる。感情や性格をコントロールする力、いわゆる『気持ち』や『ハートの強さ』を養うことこそが一流選手になるために必要な条件となってくるのです。

 ところが残念ながら藤浪君にはそれがまったく見えてこない。あえて厳しい言い方をしますが、才能に頼り過ぎるが余りに惰性でプレーしてきているようにしか思えないのです。これでは今後、仮に阪神さんから放出されたとしても彼がウチの球団に来て『見返してやるぞ』という気持ちを持つようになるとは想像しづらい」

 そして「あくまでも現場で顔を合わせるスカウトレベルの話ですが」と前置きした上で「他球団も基本的にウチと同じ考えのはずです」と推察する。つまり藤浪がトレード要員になったとしても、獲得に興味を示す球団はないだろうという読みだ。シビア過ぎる見方かもしれないが、他方面からの藤浪評を総合すればおおむね的を射ている。

 矢野燿大監督から二軍降格を言い渡されたところにも厳しい現実が反映されている。もちろんジャッジを下すのは一軍の指揮官だ。ただそうは言っても、ここまで藤浪の処遇に対しては我慢に我慢を重ねていた。

 現役時代に虎の正捕手として黄金期を支えながら数々の名投手たちとコンビを組み、二軍監督としても1年のみの就任で2018年にチームをファーム日本一へ導くなど矢野監督の前歴は輝かしい。確かな眼力を持ち合わせていると定評が高く、マネジメント能力についても何かと手厳しいOBたちから一定の評価を与えられている。そんな指揮官は就任早々の昨季、スランプにあえぐ藤浪を戦力としては計算に入れず自らの力で這い上がってくることを切望し、あえてリミットを設けることもなく気長に待ち続けるスタンスを貫き続けていた。


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