2024年4月26日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年6月27日

 それでも、民主党のマニフェストに書かれた原案を潰すということには合意が得られたようで、低所得者対策では民主党の唱えていた給付付き税額控除措置が、消費税8%では現金給付、10%では生活必需物資についての軽減税率に、基礎年金一律加算は保険料納付実績に応じた加算に、高所得者の基礎年金の減額案は削除され、総合こども園の創設が現行の認定こども園の拡充などに決まりそうである(いずれも変わる前が民主党案)。

増税した分は
全額過去の債務償還だけに

 しかし、そもそも消費税を引き上げれば、それを新たな財源として使うことができると考えること自体が誤りである。本欄にも書いたように、高齢者一人当たりの社会保障給付費を現行のままにしておけば、社会保障給付費の対名目GDP比率は、2010年の24.6%から2055年には54.0%まで29.4%ポイント上昇する(「無責任な増税議論 社会保障は削るしかない」2011年12月06日、参照)。

 消費税1%でGDPの0.5%の税収であるので29.4%ポイントを0.5%で割って58.8%の消費税増税が必要になる。もちろん、こんな大幅な増税が可能なはずはないから、その前に社会保障制度は破綻し、破綻する前の人はもらい得、破綻後の人は大損ということになる。

 私は、かなり前から、将来の社会保障給付の予測について、少しずつ前提を変えた同様の試算を発表してきた(どれも同じような値になる)。誰も間違いだとは指摘してくれないので、この数字は概略、正しいに違いないと思っている。

 将来、58.8%の消費税増税が必要になることを避けるための唯一の方法は、一刻も早く高齢者一人当たりの社会保障支出を削減することである。どうしても消費税を増税したいのなら、消費税を増税して、それを一切使わず、過去の債務の償還だけに使うことである。

 消費税を増税して、それを現在の高齢者のための社会保障の充実のために使ったのでは、将来の社会保障の破綻を早めることになる。高齢者一人当たりの支出が増えれば、高齢者の増加とあいまって、社会保障支出全体がなおさら増大するからだ。

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