2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月26日

 フランス中央銀行のノワイエ総裁が、6月11日付WSJにおいて、欧州の経済・通貨同盟は不完全であり、単一通貨は金融同盟によって補完されなければならない、と論じています。

 すなわち、ユーロ圏全体の財政状態が一国の問題の影響を受けやすい状態にある限り、国家リスクと銀行リスクとの間に悪循環が生じる可能性がある。今回の危機の中心にある危険な悪循環と感染の再発を避けるためには、国家リスクと銀行リスクを切り離さなければならない。

 そのためには、政策決定権を欧州中央銀行(ECB)に集中させ、その政策の実施については権限を各国中央銀行に分散化するような形で、ユーロ圏における単一の監視システムを発足させるべきである。そして、預金の保証、銀行の監督、危機の克服に一元的に対処する必要がある。その上で、ユーロ圏の全ての銀行から徴税し、市場で資金を調達できる預金補償基金を創設する必要がある。

 このような金融同盟が万全であるためには、単一の破産手続き、銀行の破綻処理体制が必要である。そのためには、破産を処理する規則のみならず、資本増強、リストラ、解体、資産と負債の健全な機関への移転、困難に直面している銀行を管理する能力などの運用手段を完全に統一させる必要がある、と論じています。

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 現在のユーロ危機が、欧州の経済、通貨同盟が不完全であることに起因することは、既に広く指摘されており、通貨に加えて、財政政策も一本化すべきであるとの議論がなされていますが、ノワイエ総裁は、財政同盟の前に「金融同盟」を作るべきである、と主張しています。

 ノワイエ総裁による本論説は、現在、ユーロ圏で取り沙汰されている「銀行同盟」の基本的な考え方を、当局者が一般向けに紹介した、早い段階における例という意義があります。


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