中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年6月26日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 ギリシャで再選挙が行われ、財政規律とユーロ圏にとどまることを訴えてきた新民主主義党(ND)が勝利し、いままで連立与党として同じ立場をとってきた全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と合わせて国会議席の過半数を獲得した。まずは国際金融界にとっては好ましい結果になったといえる。

ギリシャ再選挙が終わってもユーロ危機は続く

(図1)スペインの銀行不良債権比率
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 しかし、これで欧州債務危機の深刻さが大きく和らぐことにはならない。ギリシャで好ましい選挙結果がでたと思ったら、スペインの2012年4月の銀行不良債権比率が1962年の数字公表以来最悪の8.8%を記録し(図1)、市場の好転ムードもすぐ吹き飛んでしまった。

 しかも、ギリシャ問題にメドがついたわけでもない。ユーロ圏にとどまるとのギリシャの政治的意思が固まったことは大きいが、財政赤字が軽減したわけでも、経済状況が改善したわけでもない。

 とりあえず難局は乗り越えたが、さっそく新たな難局を迎えているということだ。そして、ユーロ圏諸国の今後の対応次第ではギリシャがユーロ離脱となるどころかユーロ圏解体の危機すらありえないとは言えなくなっている。

 足元の状況でまず言えるのは、ギリシャやスペインの経済苦境を見ると、財政規律ばかりを強制することに無理があるのは誰の目にも明らかになりつつあるということだ。

 すでに、EU関係者からギリシャの財政緊縮再交渉の余地が言及されたり、スペインの銀行問題深刻化と平仄を合わせるようにEU共通の枠組みで金融監督や預金保護を図る銀行同盟の具体化が表明されたりしたのは、その証左だ。

 また、財政規律を進めるためにもある程度の成長政策が必要とされることへの理解がEU諸国で進みつつある。

→次ページ 経常収支はドイツの責任を示す

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