しかし、前回書いたが、画期的な成長政策がすぐに出てくると見るのはあまりに楽観的だ。6月28日から29日にかけての欧州首脳会議で、どのような政策が決定されるのかが当面最大の焦点だが、ギリシャやスペインの経済を一気に下支えし、域内各国が財政規律を全うできる政策がすぐに実行されるとは考えにくい。
経常収支はドイツの責任を示す
ここで鍵を握るのがドイツだ。ドイツがどれだけ資金面でギリシャ、スペインを支えられるかが、どれだけ財政健全化に時間を稼げるかの大きなポイントとなる。そもそも、ドイツの金融支援はユーロ圏に加盟するドイツの義務でもある。
拡大画像表示
ユーロ圏の中でのドイツの責務は、ユーロ圏各国の経常収支を見ると良く分かる(図2)。ドイツは域内最大の経常黒字国で、オランダが続いている。一方、ギリシャ、スペインはイタリア、フランスとともに一貫して経常赤字国だ。
このことは、域内の資金の過不足が一貫してドイツ、オランダの余剰、ギリシャ、スペイン、イタリア、フランスの不足になっていることを示している。そして、域内で資金がうまく循環するためには、ドイツ、オランダに集まるマネーがギリシャ、スペインなどに常に流れなければならない。
いままでであれば、域内の資金の円滑な流れは金融機関や市場などが担ってきた。しかし、今のように欧州の市場がマヒし、金融機関もリスクが高いギリシャやスペインに資金を貸したり、その国債を購入したりしなくなると、残された手段はドイツやオランダの政府が率先してマネーを流す役割を担うしかなくなる。
この政府の役割は、必ずしも直接ドイツ政府がギリシャやスペインに金融支援することだけで果たされるのではない。EFSF(欧州金融安定基金)、銀行同盟、ECB(欧州中央銀行)の債務国への資金融通、ユーロ共同債、いずれでもよい。しかし、どのような形を取るにしろ、ドイツ国民のマネーを資金不足のギリシャやスペインに回さない限り、これらの国の経済や国民は干上がってしまうことに変わりはない。
ギリシャ・スペイン問題はドイツ問題になる
ギリシャやスペインなどの債務国が自力で資金調達できない以上、経常黒字国ドイツの国民が直接負担する形で経常赤字国のギリシャ、スペイン、イタリアにマネーを流し続けられるか、これが遠からず欧州債務問題の核心となろう。