6月14日付Financial Times紙で、Philip Stephensフィナンシャル・タイムズ主席政治論説委員が、ユーロ救済のために、フランスは、ドイツと袂を分かち南欧諸国を率いるか、又は、ドイツと組んで欧州統合の深化を図るか、という苦渋の選択を迫られている、と論じています。
すなわち、1993年以来はじめて、社会党が、フランス政治のあらゆるレベル(議会、大統領、上院、地方)で実権を握る。偉大な権力には責任がともなう。オランド大統領は、ユーロ救済をめぐり、第五共和国の大統領の中で、もっとも重要な決断を迫られることになる。
ユーロ救済論争の中では、よくメルケル独首相が非難されるが、一番長期的視野を抱いているのはメルケル首相である。短期的な救済策が成功するためには、目標までの道のりが明確でなければならない。
ユーロ債論は、ユーロ圏全体での意思決定を集団化する構造的枠組みの中においてのみ有効である。また、ドイツなどの納税者がスペインの銀行を救済することが求められるのであれば、それらの銀行がどう運営されるかに対する見解を表明できる枠組みが必要である。
ドイツは、私的な会話では、ユーロ圏の負債はいずれプールできる――ただし意思決定も共に行なう――また、重要な銀行の監督や責任は、ユーロ圏全体に及ぶ権威に任せるとも言っている。通貨や金融同盟は、ユーロ圏の経済管理を任された共同組織によって支えられなくてはならない。
マーストリヒト条約をまとめたドイツのコール首相は、通貨統合の道を歩み出すにあたり、政治同盟を求めた。しかし、ミッテラン仏大統領に拒絶された。フランスの欧州統合への情熱は、大きな決断は主権国家にのみ与えられている権限である、という強い決意を消滅させるわけではない。フランスが妥協したこともあるが、「国家の集合体である欧州」というドゴールの信念は、フランスの政策の変わることない主題である。
しかし、メルケル独首相は、コール元首相が得られなかったものを条約改定によって得ようとしている。オランド仏大統領は、緊縮財政に代わり成長促進政策を求めている。欧州中央銀行(ECB)の資金増加や欧州投資銀行の構造的資金の早期拠出も求めている。また欧州安定メカニズム(ESM)が直接銀行を支援し、ECBにユーロ圏の金融機関監督権限を与える金融安定パッケージも求めていると言われる。これらは、イタリアのモンティ首相やスペインのラホイ首相が求めるユーロの信用を高める短期的政策に近いものである。
しかし、欧州の権力バランスの中でフランスは不利な立場にある。ミッテラン元仏大統領は、ドイツの再統合を支援するか否かという強力な切り札を持っていた。そして「さらなる欧州統合」は「よりフランスらしく」を意味していた時期もあった。.
しかし、マーストリヒト条約締結以来起きた出来事は、対等な2国家からなる独仏基軸というみせかけを徐々に壊していった。オランド大統領は、経済成長を約束したが、財政赤字も削減すると言っている。しかし、フランスの競争力にはかなり問題がある。ドイツから分かれ、クラブメッド(経済、金融問題を抱える国々を中心とした地中海に面した南欧諸国)のリーダーとなることは、半世紀にわたるフランスの欧州政策を捨てることになる。