シェールガス革命と米国復活のシナリオ


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米国の著名な石油動向アナリストであるフィリップ・ヴェルレガーが、The International Economy春号に、「資源における自立・米国の驚くべき物語」という論文を発表し、今後10年程度で米国は石油資源の純輸出国となり、主たるエネルギー源をなす天然ガスの代金は圧倒的に安いから、米国は製造業のコスト競争力を回復し、21世紀は「新しいアメリカの世紀(New American Century)」になる、と論じています。

 すなわち、シェールガスのもたらす可能性は極めて大きく、石油換算で1日当たり900万バレルを超えることなど絶対にないと言われた天然ガスの米国における生産が、2010年には1190万バレルを超え、2020年までには1500万バレルを上回ると見込まれるに至った。

 注目すべきは、すべての石油メジャーが米国に見切りをつけ海外に活路を求めたあと、少数の中小採掘業者たちがもっぱらシェールガスを商品化するまでもってきたことだ。これは、いかにもアメリカ風創業魂の発露であり、その成功はやがて石油メジャーを弱体化するであろう。

 石油価格が上がれば上がるほど、米国の比較優位は高まる。ロシアを始めとする天然ガス産出国は、自国産ガスの値段を石油価格連動にして譲ろうとしない。それが証拠に、天然ガスを100万英熱量単位(BTUs)買うのに、例えば、韓国は14ドル払わなくてはならないところ、米国の場合は4ドル未満で済む(日本も同様)。したがって、天然ガスの価格が吊り上がれば上がるほど、米国にとって優位となる。

 シェールガス革命においては、先物市場の発達を重視すべきだ。石油価格の決定力をメジャー各社が喪失し、かわってニューヨーク商品取引所(NYMEX)が奪取したのち、NYMEXは先物の契約単位を1000バレルにまで思い切って引き下げた。これが、中小採掘業者に多大のリスクヘッジ機会を与えたのであって、さもなければシェールガスの商品化はなかった。米国に資源の自給を可能とさせる陰の立役者は、実は、昨今何かと不評のウォール・ストリートだ。

 ブッシュ・オバマ両政権が導入した新規制の効果にも注目すべきだ。重要なのは第一に、W.ブッシュ大統領が主唱し、議会が立法化した2007年エネルギー独立・安全保障法だ。2022年までに、1日当たり(石油換算)235万バレルのリニューアブル燃料(主としてエタノール)を用いることが同法によって義務となった。これに、オバマ政権がGM、クライスラーを救済し、両社の大株主となるのと引き替えに導入した厳しい燃費規制とがあいまって、今後はクルマの大半がエタノールを4割、ガソリンを6割とする混合燃料を用いるようになろう。

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