8月30日付ウェブDiplomatで、Scott A. Snyder米外交問題評議会上席研究員は、金正恩は、核開発を粛々と進めているようであり、その間に中国との関係が改善され、韓国新大統領とは対話の促進が予想され、北朝鮮の非核化を求める米国の政策は取り残された感がある、と論じています。
すなわち、最近、北朝鮮の核問題はあまり話題にされていないが、その間金正恩は改正憲法のなかで核開発に言及するなど、核開発を一層重視しているようである。中国とは、すでにハイレベルの交流が行われ、金正恩自身の訪中も噂されている。12月の選挙で選出される韓国の新大統領も、北朝鮮との関係改善を打ち出すことが予想され、これらは北朝鮮の核開発が進行しているにもかかわらず、行われるものである。北朝鮮に核兵器国としての地位を与えまいとしてきた米国の努力は、取り残された感がある、と述べています。
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北朝鮮は、ヨンビョンに建設中の軽水炉を近々完成し、プルトニウムを増産する可能性がある他に、濃縮施設も稼動させ、高濃縮ウラン型原爆を製造している可能性もあります。中国はこれに目をつぶって、北朝鮮との経済関係の増進を図り、本年末に選出される韓国の新大統領も、おそらく北朝鮮の非核化を北朝鮮との関係改善の前提条件にしないと考えられます。つまり、北朝鮮の核開発に対する国際的制約は機能していない、ということです。
戦後の核拡散の特色は、既成事実と差別でした。ここに来て北朝鮮は、既成事実を積み重ね、これまでの核兵器国がたどった道を歩んでいるかのように見えます。本年4月に改正した憲法の序文では、北朝鮮が核保有国であることを明記しています。しかし、核武装した北朝鮮は、日本と韓国にとって重大な脅威であり、米国の安全保障政策にとっても許しがたいものです。北朝鮮の核武装の既成事実化を阻止するため、日米韓は協力を強化すべきです。
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