2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月18日

 第2次大戦末期、ソ連の仲介を当てにして、終戦の決断を引き延ばした結果、原爆の投下やソ連の参戦を呼び込んだことがありますが、その前後のソ連の対日政策は、虚偽と欺瞞に満ちたものでした。それは、スターリンがやったことで、今のプーチンのやったことではないと言う人もいますが、今のプーチン政権も、北方領土の不法占拠を続け、それを強化しているのを見れば、対日関係では、スターリンの業績を守ろうとしているのが分かります。こういう政権には、「健全な不信感」をもって対応するのが正解でしょう。

 ロシアは、また、政治的・軍事的な力を持った国を重視します。日本のような経済力だけの国はあまり重視しません。プーチンは、「核兵器を持たない国は真の主権国家とは言えない」と発言したことがありますが、ロシアが日本を対中政策のために連携する国と考えることは、まずないでしょう。

 ロシアの現在の対中政策は、中国とは協調関係を築きながら、中国をなるべく海の方に押し出すことを考えています。海といっても、ここでオースリンが言うような海洋安全保障や自由貿易での協力にロシアが積極的になるわけではありません。米国よりも、中国を協力相手にする可能性の方が高いです。

 ロシアが中国の台頭を恐れていることはオースリンが指摘する通りですが、これに対応するには、中国と利害調整をするか、あるいは、他国と協力して対抗するかです。今のロシアは、完全に前者の選択をしています。国連安保理での投票行動にも見られるように、中国のジュニア・パートナーとさえ言われているようです。このオースリンの論は、そういう状況を十分に認識していない気がします。

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