日本の漁業は崖っぷち

2012年10月19日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 両国間の争いは、1976年に米国と旧ソ連、そして日本も1977年に設定した200海里・漁業専管水域に影響を与えたといわれています。現在では両国は和解し、アイスランドが同海域で漁獲するマダラの最大の輸出先の1つは、英国です。

 1977年に200海里・漁業専管水域の設定された時点の行動で、水産業における各国の明暗は分かれていきました。資源管理を徹底していったノルウェー・アイスランドと、「獲り過ぎたら減る」とわかっていても、「親の仇と魚は見つけたら獲れ!」と乱獲を続けてしまった日本との違いが、成長を続ける国と、衰退を続ける国との違いになってしまったのです。後れを取ってしまった35年の歳月を取り戻すべく、資源管理によるイノベーションを待ったなしで行わなくてはならないのが、日本の水産業がおかれている立場なのです。

補助金ではなく「増税」の対象

 今年の9月1日から、アイスランド政府は、漁獲した水産物に課税する漁獲枠使用税を大幅に増税しました。世界第二位の輸出を誇り成長を続けるノルウェー同様に、アイスランドでも漁業には補助金などという概念はなく、税金を納めて国を支える重要な産業の一つなのです。日本の水産業のように、衰退と高齢化が進んでいく産業とは、別世界のような話です。増税分もしくはその一部の金額は、日本を含むアイスランドから水産物を輸入する国が、販売価格に上乗せされて、支払われることになることでしょう。

 筆者は、8月にアイスランドのウエストマン諸島という、首都レイキャビックの南東に位置する人口4,300人の島に行ってきました。ちょうどその島の上位25名の高額所得者番付が、実名と住所付きで新聞に出ているというので、買付け先の大手水産加工業者の社長さんに見せてもらいました。年収は最高で約3,300万円、25位で約1,800万円でした(1アイスランドクローネ=0.7円)。

 さらに、そこで社長が言ったことが印象的でした。社長自身も十分に裕福な様子でしたが、「この上位25名の中には、自分の名前はない。また、もう1社ある地元の大手水産加工会社の社長の名前もない。3名ほど、知らない名前があるが、あとは全員知り合いの漁業者。知らない3名も恐らく漁業者だろう」と。私がこの島を最初に訪れたのは1991年で今から、20年以上も前ですが、ホテル、レストラン、フェリー乗り場、事務所等、随分立派になりました。それだけアイスランドの水産業が地域の発展に貢献したのだと思うと、感慨深いです。

「儲かりすぎる」漁業

 そんなアイスランドの漁業者にも悩みがあります。それは、上述の漁獲枠の使用税が9月1日から4倍になったことです。その使用税がマダラの場合で、キロ当り9(約6円)アイスランドクローネから40アイスランドクローネ(約28円)へと増税になったのです。

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