日本の漁業は崖っぷち

2012年9月24日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 日本の水産業は、世界の潮流から取り残されて独自の衰退を続け、悲惨な状態が続いています。その姿は皮肉にも、「ガラパゴス化している」という言葉がぴったり当てはまってしまっているのです。

 そんな日本で、水産業で成長を続けている国々にとっては、資源管理の基本となっている個別割当方式(IQ=Individual Quota)を採用して、ホッコクアカエビの資源管理を始める画期的なモデル事業が新潟で始まりました。

ガラパゴス化している日本の水産業

 後継者が少ないために60歳を超えた漁業者の平均年齢。「魚はどこに消えた?」と乱獲で魚を獲り尽してしまっているのに、環境の変化に原因があるかのような誤認。せっかく水産資源が回復する兆候を見せても、大漁旗を振って、大漁を崇める文化。漁獲量が伸びそうになってくると、増やされてしまう漁獲枠……。

 世界中の海産物を最前線で買付けている立場からすると、多くの「あり得ない!」ケースが、日本では残念ながら「普通」に見られます。世界で日本の資源管理の話をすると「なぜ、日本は制度を変えられないのか?!」と驚かれてしまうのです。日本、及び我々の水産業は非常に高いレベルに位置づけられており、それだけに、まだ「オリンピック方式なのか!」と呆れられ、その当然の結果として衰退していく姿に唖然とされ、気の毒がられてしまいます。

 失われた35年……。1977年に200海里漁業専管水域が設定され、そこで自国の水産資源を守る政策に出た国々と、世界中の漁場を次々に開拓したものの、撤退を余儀なくされた日本。その日本は、なぜ各国が200海里を設定したのかをよく考えず、漁獲枠無しで魚を獲り続け、自滅の道へ一直線となってしまったのです。1972年から1988年にかけて17年間も世界最大であった漁獲量は、持続的なものではなかったために、必然的に資源の減少とともに減少していったのです。

 世界の水産業で成長している国々にとって、個別割当て制度は、既に常識となっています。やや皮肉な言い方になってしまいますが、やがて我が国においても、個別割当て制度は、「漁業が残っていれば」実施されていくでしょう。その時期が遅ければ遅いほど、資源回復には年月を要することになります。そして、制度を変えてこなかった為政者の責任を問うことになります。「なぜ、これほどまでに良い結果となる手段があったのに早く実行しなかったのか?」「なぜ、成功している事例を徹底的に視察し、研究してこなかったのか!」「一体全体、誰がどういう反対をしてきたのか!」と。しかし、時計の針は元には戻せません

新潟県が始めた
日本で最初の個別割当制度のモデル事業 

 既に個別割当(IQ)、もしくはその進化形ともいえる譲渡可能個別割当(ITQ=Individual Transferrable Quota) を採用し水産業で成長を続けている国々の関係者は、異口同音でこう即答します。「漁業者は最初反対、その後は成功するので誰も文句を言わなくなる。良い結果が出ているので、今ではだれも反対しない」と。

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