2024年4月20日(土)

ルポ・被災農家の「いま」

2012年11月30日

賠償請求に単独で立ち向かう苦労
希望額の4分の1にも満たず

 同社の取引先は、前述したように「直販」「飲食店」「卸し」に分けられるが、2009年に法人化する以前は、ほぼJAに出荷していた。現在、そのJAには出荷しておらず、東京電力への賠償金請求は、単独で立ち向かう必要が生じた。

後藤さんの挑戦は、これからも続く

 これがかなりの苦労を強いられており、希望額の4分の1に満たない状況だ。

 「東電の言い分としては、直販部門がダメでも、ほかの部門で売上げをカバーして黒字になっているのだから認められない、ということなんです。でも、それはこちらの営業努力なんです。放射性物質の測定を二重体制にしたことも『両方は認められない』の一点張りです。この体制にしたから、売上げ減を最小限にとどめることができたのに、それを認めようとはしないんです」

 東日本大震災による原発事故以降、後藤さんはお客さんにコメの安全について根拠のある説明をし続けてきた。今思うのは、いかに自分が、これまで「安全」という言葉をたやすく使っていたか、ということだという。

 「今回の事故を通じて、しっかりとした工程管理を踏んで製品化すること、そしてお客様に言葉で説明できることができて初めて一つの商品として成り立つことを深く理解しました。今離れたお客様には、時間はかかるかもしれませんが、地道に説明する機会を設けていくことで、必ず振り向いてもらえると思っています」

(記事内写真:筆者撮影)


「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。


新着記事

»もっと見る