2024年5月21日(火)

新しい〝付加価値〟最前線

2021年12月14日

 現在、国内プリンタ市場全体では、大容量インクタンクモデルの構成比は15%以上にまで拡大しており、構成比は年々増加している。21年度累計では20%を超えるのではないかとの見方も出ているほどだ。

 実は、エプソンは、最大の商戦期である年末商戦向けに、大容量インクタンクモデルの新製品は投入したものの、インクカートリッジモデルの新製品投入を見送り、発表は年明けにした。

 同社では、「部品調達の遅れに伴う商品の供給不足が発生し、製造現場への新商品切り替えに伴う高負荷を避け、商品供給を最優先とするため」と、インクカートリッジモデルを年明け以降の発表に変更した理由を説明しているが、主力のインクカートリッジモデルの新製品を年末商戦期に投入しないという判断は、コロナ禍での家庭における印刷需要が変化し、大容量インクタンクモデルに関心が集まっていることを捉えたものだといっていいだろう。

モノクロ印刷需要を取り込む動きも

 もう一つ、コロナ禍で動きが顕著なのが、モノクロ印刷の増加である。

 家庭内で印刷する仕事用や学習用の印刷では、コストを優先してモノクロで印刷するということが多い。そのため、モノクロ印刷に適した低価格プリンタの売れ行きもいい。

 量販店などの販売データを集計しているBCNによると、21年11月の販売台数でトップとなったのは、エプソンが20年秋に発売したインクジェットカートリッジモデル「EP-883AW」だが、注目したいのは、2位に入ったキヤノンの「PIXUS TS3330(ブラック)」である。6位にも本体カラーがホワイトの同モデルが入っており、合計すると9.7%となっており、約10台に1台が同モデルということになる。

 同モデルは、今年の新製品ではないが、実売価格は1万円以下であり、4色インクカートリッジを採用。上位モデルが6色や5色インクカートリッジを採用しているのに比べると、写真印刷などにおける画質では劣る部分はあるものの、文字に強い顔料ブラックインクを採用しており、濃度が濃い黒により、コントラストが高く、細かな文字や罫線もきれいに印刷できるのが特徴だ。また、コンパクトな筐体で家庭内に設置しやすいという点でも、コロナ禍での需要を捉えた製品として人気を博している。

 家庭におけるプリンタ需要の変化に伴い、プリンタメーカー各社の製品戦略にも大きな変化が生まれている。各社の戦いは新たなフェーズに入ったといえそうだ。

   
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