次に、これに対する日本の対抗手段も三十六計で考えてみよう。
03.「借刀殺人」の計
『嫌な仕事は他人にやらせろ』ということだ。「人のふんどしで相撲をとる」計略だから、ここはアメリカ政府を矢面に立てることが大切になる。外交手法では当たり前のことなのだが、日本人はこれが下手だ。
18.「禽族禽王」の計
『勢力を倒すにはトップを倒せ』という意味だから、中国のトップに直接働きかける交渉が今回は重要だ。中国の外交部や軍の中枢部は話を誤魔化すだけだから、あまり深追いするのは賢明でない。
「将を射んとせば先ず馬を射よ」という言葉もあるように、倒したいものばかりを攻撃するのではなく、それを統括するものだけに照準を絞るということだ。
10.「笑裏蔵刀」の計
『笑顔で敵を油断させろ』ということで外交の基礎だ。硬軟取り混ぜて尖閣問題を考えなければ、日本の国益は守れない。まず、中国との強力なパイプを持つべきだろう。こんなところにも島国根性が出てきて「内弁慶の外すぼみ」になりつつあるのが気がかりだ。
今回のような「レーダー照準」問題では、必要以上に大人げなく過剰反応してしまうのは賢明ではない。専門家の世界では、すでに何度も中国のレーダー照射は経験していることだ。
23.「遠交近攻」の計
『遠くと結び、近くを攻めろ』。中国がシーレーンを巡ってアメリカとせめぎ合っているのが本質だから、日本も南沙諸島問題のベトナムと手を結ぶ必要がある。ミャンマーとの関係を近くして、中国とミャンマーの関係を裂くべきであるし、モンゴルや最近の北朝鮮なども中国との関係が悪くなっているからまさに日本が出て行くチャンスでもある。
19.「釜の底より薪を抜く」の計
『どんな強敵にも弱点はある』から、よく中国の弱点を探すことだ。中国の経済が劣化してきているので、交渉の中で日本は中国の弱みを突くべきだろう。例えば、中国国内の官僚の汚職問題も大げさに騒げばいいだろう。金持ちの目に余る裏金作りもマスコミを利用して追求すれば良いし、貧富の差も日本との比較をしてやれば、若い世代が日本の良さに目覚めるだろう。
11.「李を捨てて桃に変える」の計
これから考えられるのは、「尖閣問題」を国連管理として「捨てて利を取る」という究極の戦略だ。アメリカは、中国をけしかけて日本に危機感を抱かせればまた日本が軍用機を買ってくれて軍需産業が潤うと考えている。安保体制を重要視させれば沖縄で「思いやり予算」などといって米軍の出費がすべて日本負担になる。
実際に尖閣で小競り合いが起きたとしても、アメリカは動いてくれるだろうか。無論大騒ぎはしても自ら軍隊を投入することはしないだろう。せいぜい国連の監視を強化するのが関の山だから、初めから最悪のケースを予想して国連管理を提案するのも一法だ。
アメリカから精神的にも一旦、距離を置かない限り日本は自立できない。何よりもアメリカ追従で楽をするのが日本のこれまでだから、日本国民の目を覚まさせるためにも思い切った戦略が必要だろう。
逆に、中国を利用して「尖閣諸島」を餌にして平等互恵の関係を構築することもできる。アメリカと中国とロシアの三角関係をけしかけて日本は等方位外交に徹することもできる。
『一を捨てて十を生み出せ』とは、一時は損をしたようにみえても、長い目でみれば得をするという原理の計略だ。この際、同時に北方領土の問題も三島返還を餌にして二島返還で落とし所にする戦略で一旦、ロシアとの関係を改善してシベリア開発に乗り出すというのも面白い。
36.「三十六計逃げるが勝ち」の計
「逃げるを上となす」の計。これが最後の戦略で『チャンスが来るまで逃げ続けろ』も捨てがたい方法だ。「三十六計逃げるにしかず」という言葉で最も有名なのがこの最後の計略だが単なる「逃げ」でなくて、一時的戦術として、明日の勝利のために「逃げる」のであって、臆病から「逃げる」のは愚の骨頂だ。
つまりは「勝つ」ために「逃げる」のだが、尖閣問題を先送りして経済的利益を先取りして、まずは今の日本の国勢(国の勢力)を改善しなければ話にならない。そうすると、アベノミクスを成功させることが、重要になる。