2024年4月17日(水)

ルポ・被災農家の「いま」

2013年2月21日

 伊藤さんは、OHガッツのように法人化し、新しい道を模索している漁業者に声をかけ、自分たちのプロジェクトを説明し、賛同者を集めていった。そして、飲食店などの販路は一部共有しながら、それぞれがそれぞれの場所の復興を目指していこうと意見の一致を見た。

人口激減 だからこそ『漁業と観光の融合』を目指す

 ところで、この震災を機に、4300人だった雄勝町の人口は1000人ほどに激減した。そして、そのなかには、この地にはもう戻らない意志を固めている人も多い。

 「だからこそ大切になるのが『漁業と観光の融合』なんだよ。雄勝を観光地化して、人を呼ぶ。人で賑わえば、産業が栄える。そうすれば、人は戻ってくる。俺はそういう循環を作りたいんだ。震災前以上に『漁業と観光の融合』は重要になると、思っている」

 例えば、伊藤さんは震災前の時点で、船上のバーベキューなどのイベントを数多く準備してきた。それを一つひとつ実行に移していく決意だ。

伊藤さんたちの努力の成果は、着実に出てきている

 雄勝の漁師たちとの連動も、決して諦めたわけではない。現在、OHガッツでは、必要に応じて、地元漁師からもホタテなどを買い取るようにしている。仲買との取引価格よりも、高い価格で、だ。

 「雄勝を復活させるには、絶対に必要なんだよ、雄勝の漁師の力が。高く買えば、OHガッツに売ろうという気持ちになるんだよ、そりゃ。着実に実績が上がれば向こうから『買ってけろ』と言うようになるでしょう」

 この姿勢からは「焦らずに一歩一歩、漁師たちとの距離を縮めていく」という意思が感じられる。それだけに今は、営業力を高めることに力を注ぐ。地元の漁師からも多く買い取っていくには、水産物を卸す飲食店などの開拓が何よりも求められるからだ。そのため、2013年に入り、仙台に営業所を置いた。この1~2月には、仙台市の飲食店「伊達餃子楼」で、雄勝産ホタテ祭りを開催し、好評を得るなど、着実に成果はあがってきている。


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