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2013年3月8日

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山下一仁 (やました・かずひと)

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

東京大学法学部卒業後、農林省に入省。農林水産省ガット室長、地域振興課長などを歴任。2008年農林水産省退職。10年より現職。経済産業研究所上席研究員を兼務。ミシガン大学行政学修士・応用経済学修士、東京大学農学博士。

 そうなれば、日本は新規加盟国として、できあがったTPPへの加入交渉を行うしかない。日本はできあがった協定を丸呑みさせられる上、アメリカなどの原加盟国から、関税の撤廃、サービス自由化など一方的に要求される。「聖域なき関税撤廃を前提とする限り」交渉参加に反対するというのが自民党の選挙公約だが、アメリカが豪州に対して砂糖関税の維持を要求しているように、原加盟国であれば一部について例外要求も可能かもしれない。しかし、新規加盟国として加入交渉する場合には、このような例外要求は一切認められなくなる。加入交渉をしても例外が認められないなら、自民党は公約に縛られて、TPPに参加できない。

 過去の貿易自由化交渉で孤立した農協は、反TPP運動に医師会や生協なども巻き込んだ。農業から目をそらさせるために、TPPにはサービス、投資など21分野もあるから、農業だけが問題ではないと主張した。しかし、これらは、これまで我が国が結んできた自由貿易協定(FTA)にも含まれている。企業が投資先の国を訴えることができるというISDS条項を問題視しているが、これも日タイFTA等に含まれているし、今でもアメリカ企業はタイ等の子会社を通じて日本に投資すれば日本政府を訴えることができる。

 医師会が心配する公的医療保険のようなサービスは、そもそもWTOサービス協定の対象から外れている。WTO協定をベースとした自由貿易協定で、公的医療保険制度が取り上げられたことはない。米国が関心事項を一方的に要求した日米協議と、WTOなどの国際法を前提としたTPP協定は別ものなのだ。カトラー米通商代表補が、混合診療や営利企業の医療参入を含め、TPPで公的医療保険は取り上げないと述べたのは当然のことなのだ。

 TPP交渉の現状をみると、国営企業や薬価などアメリカが重要視している分野で、各国の反対に遭い、アメリカは孤立している。2国間ではアメリカにやられても、仲間を見つけられる多国間の交渉では、アメリカに対抗できる。ベトナムのような途上国でさえ、アメリカと対等に渡り合っている。強いアメリカに弱い日本は食いつぶされるという主張を多くの人が信じた。

TPPは農業にとっても必要

 農業にとってTPPは必要ないのだろうか。これまで高い関税で国内市場を守ってきたが、コメの消費は94年の1200万トンから800万トンに減った。今後は、人口減少でさらに減少する。海外の市場を目指すしかないが、輸出相手国の関税について、100%、0%のどちらが良いのかと問われれば、0%が良いに決まっている。日本農業を維持するためにも、外国の関税撤廃を目指して貿易自由化交渉を推進するしかない。TPPは農業のためにも必要なのだ。

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