2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2013年3月8日

選挙を左右する農協の組織票に配慮し、TPPに反対する自民党。
日本農業を維持するためにも、貿易自由化の推進は必要だ。
反対の背景をみると、農家自身ではなく、農協自体の利益をめぐる思惑が明らかに。

 よく聞かれる質問がある。「農業人口は減少しているのに、なぜ農協はTPPを左右するほどの力を持っているのですか」というものだ。

 総農家数は、1960年の606万戸から2010年には253万戸へと半分以下に、農業就業人口は60年1454万人から12年251万人へ実に83%も減少した。今では、GDPに占める農業の割合は1%に過ぎない。

農協の持つ政治力の源泉

 その一方で、JA農協はTPP反対の一大政治運動を展開しており、昨年末の選挙で、多くの自民党議員は、農協にTPP反対の約束をして当選した。自民党内のTPP反対議連には、所属国会議員の過半数の203人もの議員が集まっている。朝日新聞と東大の調査でも、自民党支持者はTPP賛成なのに、自民党議員には反対派が圧倒的だという、不均衡が指摘されている。

 農業が衰退しているのに、なぜ農協の政治力が増すのだろうか。第一に、一農家一組合員が基本だが、農家数が253万に減少しても、農協の正組合員数は472万も存在する。農業を止めても正組合員のままでいる人が多いからだ。また、地域の人であれば農業と関係なくても組合員となれるという准組合員制度がある。この准組合員が正組合員を上回る497万にまで急増しており、両者合計で、1000万人近い組合員を農協は擁している。

 より重要なものは選挙制度である。2人の候補者が競っている小選挙区制では、たとえ1%の票でも相手方に行くと、2%の票差になってしまう。これを挽回するのは容易ではない。農協には候補者を当選させる力はないが、落選させる力は十分持っている。

 TPP参加国は今年10月の合意を目指している。自民党が7月の参議院選挙前にTPP参加を決断したとしても、アメリカ議会への通報との関係から3カ月後の参加になる。その時、TPP交渉は終了している可能性が高い。


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