2022年9月27日(火)

日本再生の国際交渉術

2012年12月12日

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渡邊頼純 (わたなべ・よりずみ)

関西国際大学国際コミュニケーション学部長・教授

1953年生まれ。上智大学大学院国際関係論専攻で博士後期課程を単位取得満期退学。GATT事務局経済問題担当官、外務省経済局参事官などを経て2019年より現職。慶應義塾大学名誉教授。専門は国際政治経済論、GATT・WTO法、欧州統合論。近著に『詳解 経済連携協定』(日本経済評論社、監修)。

 11月14日の党首討論で野田佳彦首相は突然の衆院解散を持ち出した。まるで早期解散の「約束」実行を迫る安倍晋三自民党総裁に「売られたケンカを買いましょう」と言わんばかりの「サプライズ・アタック」だった。

近づく衆院選挙と迷走するTPP論争

 その前後から野田政権中枢はTPP推進を以前より明確に打ち出すようになっていた。前原誠司国家戦略相は11月10日に「TPP交渉に参加すべきだ」と明確に述べ、「民主党の公約として争点化すべき」とした。また、同日岡田克也副総理も「(交渉参加について)最終的にそんなに先送りできない状況になりつつある」と述べている。他方、山田正彦元農水相に代表されるTPP交渉参加への傾斜を嫌う勢力は「TPP交渉参加を表明したら覚悟している」(いずれも『日本経済新聞』11月10日)とけん制、実際にその後民主党を離れ、新党を結成している。

 11月16日午後衆議院は解散され、現在選挙戦は終盤にさしかかっている。しかし、TPPについては民主党も自民党も前原氏が言ったような「争点化」を回避した形となっており、有権者にとっては甚だ不明瞭で分かりにくい論点となっている。

 11月27日に発表された民主党のマニフェストでは「TPP、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)を同時並行的に進め、(最終的な参加については)政府が判断する」となっている。TPPをそれ以外の東アジアのFTAと並列に置くことでTPPの重みを相対的に軽くした形になっている。さらに公示後のインタビューで野田首相はTPPについて「○か×か」と聞かれて△と答え、その理由として「交渉に向けた協議が継続中であるため」と述べている。

 一方の自民党は、11月30日の党首討論会で安倍総裁が「『聖域なき関税撤廃』という条件を変えることができるかどうか」がカギだとし、「自民党には突破する交渉力はある」とTPP交渉参加への含みを残した。少し前の11月21日に発表された自民党の政権公約では「『聖域なき関税撤廃』を前提とする限りTPP交渉参加に反対」としていたのと比較すると、こちらはやや交渉に前向きになったのかとの印象すら与える。いわゆる「第3極」では、TPP賛成の「日本維新の会」とTPP反対の「太陽の党」は合流して、「TPP交渉に参加するが、国益に沿わなければ反対」との表現に落ち着いた。

 このように、TPP交渉には一貫して賛成している「みんなの党」を例外として、政権を担う可能性が高い各党はそれぞれ党内に賛成と反対の勢力を抱えており、公約の書きぶりが「折衷案」的にならざるを得ない状況にある。この様な状況ではTPPは争点にならず、有権者にとっては実に分かりにくいだけではなく、TPPについてまともな議論も提供されないまま、国民はどの党の候補者に投票すれば良いのか分からない。

 そこで以下ではもう一度そもそもTPPとは何か、考えてみたい。

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