Wedge REPORT

2020年4月24日

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 新型コロナウイルスの感染拡大により、不要不急の外出やイベントの延期・中止を強く求める「緊急事態宣言」を政府が出したのは4月7日。新型コロナウイルスの日本での初感染が確認されてからおよそ3カ月も経ってからだった。

日本の政治指導者たちのメッセージは国民に届いているのだろうか…… (UPI/AFLO)

 緊急事態宣言は、2009年の新型インフルエンザの流行を受けて、13年に施行された「新型インフルエンザ等対策特別対策措置法(以下、特措法)」(今年3月改正)に基づく。宣言されたことで、自治体を通じたイベントの中止や外出自粛の要請、医療施設を確保するための土地や建物の収用ができるようになった。

 緊急事態宣言を出す前まで、知事のお願いレベルの「自粛要請」が繰り返され、政府が責任を取るという姿勢を明確に見せなかった。法律に基づいた権限を執行して、国民に行動変容を促すことができなかったのは、なぜだろうか。

危機管理の鉄則
見逃し三振をしない

 「危機管理の鉄則は『空振り三振はしても、見逃し三振をしない』こと。初動から強力な危機管理の施策を打つことができていなかった」と、危機対応を専門とする日本大学危機管理学部の福田充教授は指摘する。

 「新型インフル等特措法は、外出規制やイベントの中止などを、法的根拠をもって要請し、私権を制限できる非常に強い法律で、いわば伝家の宝刀。それに基づいて緊急事態宣言を出す、ということは野党やメディア、社会から大きな批判を浴びることになり、さらに感染症対策が遅れるリスクもあった」(同)。初動で大規模な社会統制をすることにより、経済が停滞することを避けたとみられる。

 初動では、専門家をうまく活用することもできなかった。新型コロナウイルスの発生を受けて政府が2月16日に発足させた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」。座長を務める脇田隆字・国立感染症研究所所長、副座長の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長らがそれぞれの専門分野から対策を練った。

 しかし、この会議のメンバーの専門分野を見ると、ほとんどが感染症なのだ。「感染症の専門家はウイルスや感染防止、治療についての知識が豊富であるが、自治体や企業、学校がどう対応すべきか、という社会政策には詳しくない。ましてや関連する法律の整備や改正については社会科学の知見が求められる」と福田教授は強調する。

 事実、安倍晋三首相が学校一斉休校措置を発表した時、専門家会議ではその点について議論がなかった、と委員である武藤香織・東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授が語ったことが報じられている。医学、公衆衛生学、公共政策学の分野の専門家をバランスよく配置し、対策を導き出す必要があったのだ。

 政府が逡巡(しゅんじゅん)する一方、北海道の鈴木直道知事は、2月28日に「緊急事態宣言」を行い、道民に週末の外出自粛を求めた。これについては「法的根拠がない」とも指摘されているが、内閣法制局長官や最高裁判所判事を務めてきた山本庸幸(つねゆき)弁護士は「公衆衛生の最終責任者を都道府県知事としている地方分権の本来の趣旨に沿った望ましい動き」と話す。感染症への行政対応は地方分権が進められており、感染症患者の就業制限や建物への立ち入り制限に対する実施主体は都道府県知事であると感染症法で定められている。

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