2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2020年4月24日

(出所)ウェッジ作成 写真を拡大

 ただ、こうした都道府県知事の要請はあくまで行政指導という範囲に収まるという。「法的な義務を課すものではなく、任意的な協力を求めるもの」なのだ。特措法という法的根拠があるものとは、同じ「要請」であっても実効性が異なる。

 東京都の小池百合子知事が緊急事態宣言が出た直後の会見で「東京都として『現在が感染爆発重大局面にあること』を何度も申し上げ、外出自粛をはじめとする協力を賜ってきた。しかし、国による宣言によって、強く外出自粛を明確に後押しする状況が整った」と語った。地方の判断を後押しするためにも、政府はもっと早い段階で「緊急事態宣言」など強い意思表示をする必要があったのではないか。

現場の柔軟な判断が
クラスターを防いだ

 北海道と同じく「独自の決断」をしたのが和歌山県だ。2月初旬、和歌山県の済生会有田病院で、医師と患者に新型コロナウイルスへの感染が疑われる事象が発生した。この時点で、県内に感染者は発生しておらず、政府のガイドラインでは、新型コロナウイルスを調べるPCR検査を行うのは、「中国への渡航歴がある人」か「重症者」に限定されていた。

 政府のガイドラインには当てはまらなかったが、和歌山県福祉保健部の野尻孝子技監は検査を行う決断をした。

 その結果は陽性。もし、ガイドラインに従って検査しないでいれば、病院内で感染拡大(クラスター)が起きていた可能性もあった。柔軟な考え方で、独自の判断をしたことが拡大防止につながった。

 「もう少しファジー(柔軟)に対応しようと考えました」と野尻技監。2月13日、仁坂吉伸知事が記者会見して陽性が2人、調査中が3人いることを発表し、済生会有田病院に対して、外来の中止、入院の受け入れと入院患者の退院の中止、外来受診者のうち発熱などの有症状者に対応する接触者外来設置などを要請した。

1カ月足らずで再開した済生会有田病院(写真中央、野尻技監)
(THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO)

 さらに仁坂知事は重要な判断をした。濃厚接触者、職場関係者など感染の可能性がある人、全員の検査をするというものだ。当初は、野尻技監も「全員」とは考えていなかったという。それもそのはずで、職場関係者などを含めると、検査数は膨大な数になる。そのため、検査には優先順位をつけ、これも国が出していたガイドラインとは異なり、無症状の人も含めてPCR検査を行った。その数は474人にのぼった。

 「医師が感染したというインパクトは強烈でした。だからこそ、可能性のある人、全員を検査するというメッセージは、医療関係者を含む県民に安心感を与える効果があったと思います」(野尻技監)

 検査数を多くすることで、感染者が大量に出た場合、医療崩壊が起きることが懸念されるが、初期の段階であるからこそ「県内の広がりを把握する方が大事で、広がらないようにすることが医療崩壊を防ぐことになる」(同)と考えたという。


新着記事

»もっと見る