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2013年3月27日

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西村 陽 (にしむら・きよし)

神戸大学経営学部非常勤講師

1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業。1999~2001年学習院大学特別客員教授。2006~2008 大阪大学招聘教授。公益事業学会理事・同政策研究会幹事。国際公共経済学会理事。主著に『電力改革の構図と戦略』『電力自由化完全ガイド』等。

ガスタービンなくして風力は存在できない

 こうした困難に輪をかけているのが、米国最大と適地と言われている風力発電所の急増の問題である。風力発電を系統に優先的に接続した場合、その分他の発電所が電源の組み合わせから弾き出され、運転できなくなる。テキサスの場合、ベース電源から順番に原子力、石炭、ガスタービンという順に積み上げられているので、風力の増加分はガスタービンが運転できなくなることになる。

 一方で、風力のような不安定な電源は、電気の安定供給に絶対に必要な周波数調整に慢性的に悪影響を与えている。それをカバーして停電しないように周波数を維持するためには、風力の変動に追いつけるスピートで出力制御できる電源が風力の分だけ必要になる。ハイスピードの制御が可能な揚水発電を多く持つわが国と違い、テキサスの場合ガスタービンが周波数調整電源になる。風力はガスタービンの居場所をなくすが、ガスタービンなくして風力は存在できないという皮肉な現実がここにある。

テキサスの時間帯別電力需給と夜間の周波数調整困難化回避(イメージ)
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 事態が深刻になるのは夜間の時間帯である。テキサスの風力発電は海と陸の温度の関係で夜間最も出力が大きくなるが、電力需要は通常24時間運転する石炭・原子力に風力を加えてほぼバランスするので、周波数調整に不可欠なガスタービンを運転すれば供給過多になり停電してしまう(図参照)。これがドイツのように他の地域と太く連系している地域であれば、風力の不安定な電気もろとも他国に輸出してしまうという裏技もあるが、系統の独立性が高いテキサスでは使えない。

 これに対してERCOTが考えた策は、エネルギー効率から考えると常識外のものである。まず風力は補助金を吐き出させて夜間はリアルタイム市場にマイナス価格で入札させる。すると電気のスポット価格がマイナスになるので、電力会社に深夜電力をタダにするメニューを作らせ、エネルギー効率が悪く、電気を多めに使うヒーター式電気温水器等で深夜負荷を引き上げる。そうすれば夜間負荷が大きくなってガスタービンの運転余地が生まれるのである。実際テキサスの電力会社にメニューをウェブで見ると、戸建住宅限定で「ナイトフリー(夜間は無料)」のメニューを確認することができる。ここまで来ると「何のために風力を入れているのか」という話になる。

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