2024年5月17日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2022年11月13日

フィリピンの英会話学校は外貨を稼ぐ有望産業

ボラカイ島ホワイト・ビーチのバンカーボートの群れ

 定年退職後の9年前に海外放浪を始めた頃から韓国や日本の旅人からフィリピンの英会話学校の話を聞いていた。アメリカへの短期留学やホームステイ、オーストラリアでのワーキングホリデーなどと並んで、英語を話したいという若者の選択肢の一つとしてフィリピンの英語学校(English school)があった。

 1人の日本人旅行者が世界一周の旅の最初にフィリピンに行きセブ島の英語学校で数カ月英語漬けになった話を聞いた。韓国の若い男女が多く、放課後や週末に一緒に飲みに行ったりビーチで遊んだりした話を聞いて羨ましく思った。そんなわけで今回のフィリピン旅行ではぜひセブ島で英語学校を覗いてみようと考えた。

セブシティー目抜き通りの日系英語学校

 8月22日。セブシティーは人口82万人でサンフランシスコと同じくらい。フィリピンで5番目の大都市である。目抜き通りのオスメーニャ・ブルーバードを歩いていたら英語学校らしき看板があったのでお邪魔してみた。

 オーナーは関西出身で留守番役の男性も関西弁で応対してくれた。放浪ジジイを受講希望者と思ったのか縷々説明してくれた。現在はコロナ対策で規模を縮小しているが随時希望者は受け付けている。日系英会話学校なので生徒は日本人のみ。

 1コマ45分で希望に応じて最大1日8コマまで。期間は数日から数カ月まで生徒の目標と都合にあわせている。プログラムは生徒と面談して期間、1日のコマ数、授業内容を決める。原則マンツーマン・レッスン。担当講師がプログラムの進行管理を行い生徒の学習進度を確認しながら進める。発音や言い回しが偏らないように担当講師の他に数人の補助講師がついて交替でマンツーマン・レッスンを行う。後日他の英語学校をまわってみたがマンツーマン・レッスン方式やプログラムの作り方はほぼ同じであった。

ベトナムで英語を教えるため渡航する女子

 8月22日。夕刻カプセル・ホテルのテーブルでフライドチキン専門のファースト・フード・チェーン、ジョリビー(Jollibee)のテークアウト弁当を食べている女子がいた。ストロング・ビールのレッド・ホースをチビチビ飲みながら話を聞くとベトナムのホーチミンで働くために労働ビザ取得に必要となる健康診断(medical checkup)を受けにネグロス島からセブシティーに来たのだという。ネグロス島には外国で通用する健康診断証明を出せる病院がないらしい。そういえば昨日ホステルに泊まっていた看護婦さんも健康診断のためセブシティーに来たと言っていたことを思い出した。

 彼女はホーチミン市の英語学校で講師をするのだという。24歳の彼女は海外渡航が初めてなのでナーバスになっていると言った。2年契約だが延長条項があるので頑張って4年くらい稼いできたいと意気込みを語った。

「急いでご飯を食べて、8時から30分づつ2人のタイの生徒にオンライン・レッスンする予定です」と席を立った。後で彼女のカプセルの前を通ったらスマホでビデオ通話しながらレッスンしていた。放浪オジサンと話しているときは彼女の英語はフツウのフィリピン女子の英語だったが、タイの生徒にレッスンしているときの彼女の発音はアメリカのニュース番組のアナウンサーのような完璧な発音であった。彼女のプロ意識に感嘆した。

韓国人・中国人の生徒は半数以上が子供?

 8月24日。グーグル検索したらセブシティーだけでも英語学校が23校もあった。宿から歩いて15分以内に3校あったので午前中に訪問することにした。最初のOM校はオーナーが韓国人の韓国系英会話学校。コロナ対策で現在はマンツーマンのオンライン・レッスンだけ。在籍している講師は35人、一人当たり20~30人の生徒を受け持っている。生徒の国籍はメインが韓国人、次が中国人、そして最近増えているのがベトナム人。

 驚いたことに韓国人・中国人は半数以上が小学生以下とのこと。韓国・中国では外国人保育士を雇って英語で遊ばせる幼稚園が流行っているくらい早期英語教育ブームなのでその影響なのであろう。もちろん大学生や社会人の生徒も少なからずいるというが。韓国・中国の代理店と提携しているので両国の生徒は代理店経由で募集。コロナ以前は近くのホテルと契約して来比した生徒の学生寮としていたという。

日系英会話スクールもコロナ明けの本格的稼働にむけ粛々と準備中

 U英会話スクールは15階建てビルのワンフロアの四分の一を占める比較的大きいスクールだ。日本人オーナーは日本に帰省中で留守を預かるマネージャーは英語教育を専攻したというクール・ビューティのフィリピーナ。

 生徒の国籍は日本人が過半。それに韓国人、中国人が続く。ロシア人も数人いるという。講師は現在20人弱。対面レッスンも限定的に再開した。オンライン・レッスンでは3歳から70歳までの幅広い年代の生徒がいるという。

 次にM英会話スクールに向かった。8階建ての新しいビルはMグループが所有しており、1階はレストラン、バーなどが入居。7階のレセプションエリアは洒落たカフェのようで驚いた。マネージャーらしき日本人女性が応対してくれた。

 在籍講師は80名。現在対面レッスンで受け入れているのは20名程度。受講者は大半が日本人。MRグループは東京・神奈川のオフィス街に8校の英語学校を展開している。自己啓発意識の高い社会人が休暇を利用して集中マンツーマン・レッスンを受講するためにセブシティーに来るようだ。受講生の平均年齢は40歳台でモチベーションが高いとの説明。

 事前テストと本人の希望をヒアリングしてフィリピン人の担当講師が本人と相談しながらプログラムを作成する。毎日のマンツーマン・レッスンでは担当講師と補助講師数人が交代で行う。本人が希望すれば午前9時から午後6時までランチタイムをはさんでびっしり英語漬けになれると。レッスンは週5日で1コマ50分。10分の休憩時間もほとんどの受講者は予習・復習に余念がないという。観葉植物に囲まれた開放感のある広いフロアには自習スペースもあり、マンツーマン・レッスンのブースもある。

フロアには静かに音楽が流れており自習スペースでは寸暇を惜しんで英語に

 取り組んでいるビジネスマンたちの静かな熱気が伝わってきた。こんな環境なら古希を迎えた放浪ジジイも英語漬けをしたいと思った。

 講師の採用選考では大学の専攻分野に関わらず幅広い分野から優秀な人材を採用している。採用後に数カ月英語の教え方を集中研修。勤務成績優秀(受講終了後の生徒からの逆評価を含めて総合判断)な講師は日本の各校に派遣している。日本校への派遣が講師たちの大きなモチベーションになっている。日本の英語学校法人ではいろいろな企業と法人契約をして社員の英会話教育を実施しているという。

 マネージャー女子の説明はクライアントへの企画のプレゼンのように分かり易くMグループの経営理念が伝わってきた。つまり英会話学校は顧客満足度の最大化を目標とするサービス産業であるという基本理念を愚直に具現化しようとする意志である。

 英会話スクールをビジネスという観点で見ると規模も経営者も運営スタイルもかなり異なるように思えてきた。今まで見てきたのはセブシティーという市街地に立地する英語学校である。それでは話に聞いていたセブのビーチの英語学校はどんな雰囲気なのか興味が湧いてきた。ちなみにセブシティーにはビーチはなく、ビーチリゾートとして有名なのはセブ島と橋でつながっているセブ島の対岸のマクタン島である。グーグルでチェックするとビーチ沿いに少なくとも4つの英語学校がある。早速マクタン島に渡ることにした。

セブシティーのカプセルホテルにて全員集合

以上 次回に続く

   
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