これまで日本も含め関係各国は、太陽光パネルや電気自動車(EV)の蓄電池に不可欠な鉱物資源については中国依存度が高く、中国側が市場支配力を武器に、外交圧力をかけることも懸念されてきただけに、とりあえずこの分野で合意したことの意義は小さくない。
対中ディリスキングに向けた具体的かつ重要な第一歩といえよう。
必ずしも足並みがそろわない米経済界
これに対し、中国側の受け止め方は複雑だ。
むしろ、中国にとっては、ディリスキングも従来のデカップリング的思考と実質的に大差なく、対立を深めることに変わりない、との否定的反応も出ている。
ブルンバーグ通信は、「『ディスキング』はたんなる『デカップリング』の言い換えに過ぎず、行動面では同一であり、対中国包囲を意図したもの」との中国新華社通論評を引用。さらに、秦剛外相も外遊先のドイツでの記者ブリーフィングで「もし、EUが『ディリスキング』の名のもとに中国から離れようとするなら、さまざまな(中国との)機会、協力、安定と発展から切り離されることになるだろう」と警告したと報じた。
時を同じくして、傳聡EU大使も「もしそれがハイテク技術分野のサプライチェーンからの切り離しを意味するものであれば、われわれは断固反対する」と批判している。
また、今月初め、米政府は、シンガポールで「アジア安全保障会議」が開かれたのを機会に、米中国防相会談を打診したが、中国側の拒否で実現しなかった。外交筋は、中国が、西側主要諸国による「ディリスキング」という新たなアプローチに対しても、以前同様の警戒を少しも緩めていないことを示すものだ、と解説している。
しかしその一方で、中国側は最近、米国大手企業に対しては、柔軟な態度をとっており、経済面での接触には意欲的だ。
電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営者(CEO)が6月1日、訪中した際も、秦剛外相、王文濤商務相ら政府要人が応対し、「互恵的協力推進」の重要性について親しく意見交換した。
その前後にも、JPモルガン・チェース、コーヒーチェーン「スターバックス」など米大手企業の経営陣が相次いで北京を訪れており、米政府とは一歩距離を置いた〝政経分離〟の動きが話題を集めている。
いずれにしても、バイデン政権が今後も、対中政策の難しいかじ取りを迫られていることには変わりない。