日米欧主要国が対中国戦略の経済面で、「デカップリングdecoupling」(関係切り離し)から「ディリスキングde-risking」(リスク回避)への転換に乗り出し始めた。中国との関係悪化を避けると同時に、西側世界の結束を図る狙いがある。
米国、欧州が歩み寄った〝苦肉〟の表現
「われわれは、多様化とパートナーシップ深化、そして『デカップリング』ではなく『ディリスキング』に基づいた、経済的強靭性と経済安全保障に向けた協調的アプローチのための具体的諸策を打ち出していく」
先の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、一読しただけでは真意がわかりにくい上記のような文言が最終日の共同声明の中で簡潔に盛り込まれた。ただ、出席した7カ国首脳たちが、その意味合いについて十分納得済みだったことはいうまでもない。
すなわち、今後の対中国戦略について、①経済面における「デカップリング」的アプローチはとらない、②代わって、過度の対中関与がもたらすリスクの軽減、回避策を講じる――との新たな方針を相互に確認しあったものだった。
しかも、対ウクライナ支援継続、核軍縮・不拡散努力強化など6項目からなる重要合意内容の中にあえて盛り込まれたこと自体、G7が対中国関係の今後のあり方をいかに重大視していたかを如実に示している。
「デカップリング」については、とくにコロナ危機およびそれに続くロシアのウクライナ侵攻を発端とする世界的経済混乱以来、米国内で対中国批判が高まり、経済面での「切り離し」論が保守派の間で台頭し始めた。
対中強硬論に立つ共和党議員たちも、バイデン民主党政権に対し、ロビー活動などを通じより厳しい対中姿勢を政策に反映させるよう圧力をかけてきた。
バイデン大統領自らも、クリントン、オバマ同党政権時代と比べ、中国問題に関する限り、よりタカ派寄りの立場を表明してきたことも否定できない。
昨年10月7日、米商務省が新たに打ち出した米国製高度コンピューターおよび半導体製品・部品の厳しい対中輸出規制策や、その後のバイデン政権による一連の政策は、こうした米国内の対中批判の高まりを反映したものだった。