2024年4月20日(土)

バイデンのアメリカ

2023年5月17日

 バイデン米政権発足以来、対立色を深める米中関係への懸念が米国内外で浮上しつつある。複数の有力メディアも警鐘を鳴らし始めた。

(Dilok Klaisataporn/hachiware/gettyimages)

政権発足後から中国〝締め出し〟を次々に実施

 「習近平国家主席は、専制体制こそが『将来の波』であり、民主主義体制は世界で機能しなくなると考えている。彼の体内に、民主主義という骨は1本たりとも存在しない。これからの歴史は、民主主義が専制主義と対峙していくためのコンセンサスを得られるかどうかにかかっている」――。政権発足100日を迎えた一昨年4月、バイデン大統領はホワイトハウス記者団を前に力説、西側世界の結束を固め、中国と対抗していく決意を表明した。

 その後、今日に至るまで、バイデン政権の対中姿勢は、過去の歴代政権と比べてもかなり厳しいものになりつつある。一部には、「対中強硬路線で野党共和党と張り合っている」との指摘まで出ている。

 実際に、同政権発足以降、両国関係の緊張を高める要因となった米側の主な動きとして、以下のような事例が指摘されている:

・2021年3月、米政府が香港、新疆ウイグル自治区における中国の人権抑圧に抗議し、トランプ前政権以来の対中国産品輸入課徴金、中国要人の入国制限政策を継続するとともに、新たに人民解放軍と関係の深い中国企業への投資禁止措置を打ち出す

・21年6月、北大西洋条約機構(NATO)が米側の強い要請により、「中国の野望と対外攻勢は、法に依拠する国際秩序と同盟体制に対する挑戦を象徴している」として、初めて中国の脅威に言及した共同声明を発表

・22年2月、国務省が、中国人権問題に抗議し、北京冬季五輪に対する外交的ボイコットを発表。英国、豪州、カナダなど一部同盟諸国も追随し、政府関係者の北京訪問を見送った。中国外務省は「スポーツを政争の具にしている」と激しく反発

・22年5月、来日したバイデン大統領が都内での記者会見の中で「(もし攻撃を受けた場合)台湾を軍事的に防衛する用意がある」といったん発言、そのすぐ後に「私の想定では、そのようなことにはならないだろう」と付け加えた。しかし、中国外務省はただちに反応して「中国は米側の発言に強い不満と反対を表明する」と抗議。翌日、大統領も「わが政府の台湾政策は一貫して何ら変わっていない」と釈明に追われる

・22年5月末、ブリンケン国務長官が①国内工業・テクノロジー・インフラへの本格投資、②中国の侵略的行動を阻止するための西側陣営結束、③中国のグローバル進出との対峙――の3本柱からなる対中基本戦略を外交演説で表明

・22年8月、民主党のペロシ下院議長(当時)の台湾公式訪問、蔡英文総統との会談に猛反発した中国側が、ただちに気候変動問題の米中協議、両国間ハイレベル軍事通信中断、ペロシ議長に対する入国禁止などの報復措置に出たほか、1996年の台湾海峡危機当時を上回る大規模実戦軍事演習、台湾上空を飛び越える弾道ミサイル発射、中国航空機の台湾上空接近飛行などを繰り返し、一気に緊張高まる


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