2024年12月23日(月)

バイデンのアメリカ

2023年4月7日

 建国以来、星条旗への忠誠と結束を誇りとしてきた米国で最近、愛国心の低下が目立ってきた。民主、共和両党関係者の間では、2024年大統領選での有権者投票動向への影響も含め、大きな関心が集まっている。

(Rawpixel/Deni Prasetya/gettyimages)

米国民のよりどころの〝変化〟

 世界の先進国の中で、米国ほど愛国心の旺盛な国はないといわれてきた。実際、公官庁、一般家庭を問わず全米いたるところに普段から星条旗がたなびき、文化、スポーツイベント会場などでは例外なく、国歌斉唱が日常茶飯事化し今日に至っている。

 ところが、その愛国心にもはっきり陰りが見え始めた。

 去る3月22日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は、シカゴ大学と合同で実施した注目すべき最新世論調査結果を発表した。

 それによると、米国民にとってのさまざまな価値観の中で、「愛国心」について「極めて重要」と答えた人は全体の38%にとどまり、「ある程度重要」が35%だった。同様調査を実施した1998年当時、70%が「極めて重要」と回答したのと比べ、その落差が際立っており、当時の調査を担当した責任者は、今回の結果について「劇的かつ驚くべき数字であり、『変わりゆくアメリカ』の最たるもの」とのコメントを寄せている。

 たまたま昨年の「建国記念日」に当たる7月4日にギャラップ社が発表した調査でも、「米国人として非常に誇りに思う」と回答した人は同じく38%となっており、2001年の同調査以来、最低となった。これまでは毎回、55%を下回ることは1度もなかったという。

 かつて愛国心は、多様な人種、移民、宗教からなる米国では、国をひとつにつなぎとめる唯一の精神的よりどころとされてきた。危機に直面した際には、それがあふれるほどのエネルギーと化し、時の政府をも突き動かした。

 太平洋戦争の口火となった「真珠湾攻撃」に反応した米国民、政財界の沸き立つ反日闘争心は、その最たるものだった。筆者自身、長年にわたる新聞社の特派員生活を通じ、各地で旺盛な愛国心に圧倒される場面に出食わすことがしばしばあった。


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