2024年12月22日(日)

バイデンのアメリカ

2023年2月19日

 2024年米大統領選挙出馬に意欲を見せるバイデン大統領が、このところ、共和党の最大の弱点とされる「サードレール・ポリティックス」に活路を見出し始めた。米マスコミの大きな話題となっている。

バイデン大統領による一般教書演説から、「サードレール」が話題となっている(代表撮影/ロイター/アフロ)

米国にとっての「サードレール」は何か?

 「サードレールthird rail」とは鉄道用語で、地下鉄などの電車を動かすため、走行用レールとは別に並行して敷設された第三の給電用レールを意味する。「第三軌条」と呼ばれる。

 転じて米国では、特定の政策について、触れると手痛い反発を受けたり、政治生命を脅かされないため、与野党とも正面切って難クセをつけたがらない政治慣例を意味している。日本語の「触らぬ神にたたりなし」に当たる。

 いうまでもなく、米国民にとっての「サードレール」は、ソーシャル・セキュリティ、メディケア、メディケイドに代表される社会保障制度を意味する。しかし、「小さな政府」を信奉する共和党保守派は以前から、「大きな政府」の象徴ともいえる社会保障制度をやり玉にあげてきた。その分、選挙の際に有権者にしっぺ返しを食うリスクともなってきた。

 ところが最近、この「サードレール」問題がにわかに米マスコミの話題に上り始めた。

 きっかけは、去る7日の米上下両院合同会議におけるバイデン大統領の力のこもった一般教書演説だった。

 内政重視の1時間近くに及ぶ演説は、主要テレビ局を通じ全米に実況中継されたが、とくに多くの視聴者を前に好評を博したのが、途中ヤジを飛ばしてスピーチを遮ろうとした何人かの共和党右派議員たちとのアドリブでのやりとりだった。

 社会保障や教育制度の充実の大切さを説く中で、「共和党内には、こうした国民が恩恵を受ける権利を終わらせようとする動きある」との一言にいきり立った女性議員が、「嘘つき大統領!」などと怒声を浴びせると、大統領は少しも動じる様子を見せず、笑みさえ交えながら「わかった。共和党は、社会保障に手を付けないということだな。結構なことだ」と巧みに切り返し、出席したほぼ全員の民主党議員はもちろん、一部共和党議員まで含め熱烈な拍手喝采を浴びるかたちとなった。


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