2024年7月16日(火)

バイデンのアメリカ

2023年2月19日

 実際、G.W.ブッシュ大統領は在任中、ソーシャル・セキュリティの「民営化」に意欲を示し、ポール・ライアン下院議長(当時)も、メディケアの「抜本的改革」を提唱した。しかし、議会で多数の支持が得られず、日の目を見ることはなかった。トランプ氏は、2016年大統領選の選挙期間中は、社会保障問題での目立った発言は控えていたが、ホワイトハウス入りしてからは、ソーシャル・セキュリティ、メディケイド関連の予算カットにたびたび言及していた。

大統領候補者への足かせに

 今後、政権奪回を目指す共和党にとって気がかりなのは、24年大統領選への影響にほかならない。

 まず、すでに出馬表明しているトランプ氏に関しては、16年大統領選の時と同様、来年も選挙期間中は、社会保障問題への言及をあえて封印するとみられる。しかし、それ以外の候補は、この問題で民主党の攻撃にさらされる可能性がある。

 今月15日、正式出馬表明したばかりのニッキー・ヘイリー元国連大使は、過去に、ソーシャル・セキュリティ、メディケア、メディケイドのいずれについても「ビッグ・ガバメントの元凶」といった発言をTV会見などで繰り返してきており、来年選挙戦の本番では民主党候補から攻撃対象にされかねない。

 まだ正式表明していないものの、出馬の可能性が極めて高く最有力候補の一人とされるロン・デサンティス・フロリダ州知事は、かつて連邦下院議員だった当時、①社会年金受給資格年齢の引き上げ、②際限ない社会保障歳出への上限設置――などからなる「予算関連決議案」(共和党)に支持票を投じている。

 また、出馬に意欲を示しているといわれるマイク・ペンス元副大統領も、つい最近、全米卸売業者協会での演説で、かつてのブッシュ氏のソーシャル・セキュリティ「民営化」案に言及し、「今まさにその時期は来ている」と同調姿勢を示し、Yahoo News などで大きく報道されたばかりだ。

 当然、民主党が、こうした共和党の体質を見逃すはずはない。

 昨年の中間選挙では、民主党全国委員会(DNC)は全米各州激戦区の選挙戦でソーシャル・セキュリティ問題について、共和党対立候補を追い落とす目的で「XX候補は民営化を支持している」「XX 候補は制度廃止を主張している」といったTVコマーッシャルを頻繁に流した。そのために投じた費用は9700万ドルにも達したという。

 政権与党が圧倒的に不利とされた中間選挙で、民主党が予想以上に健闘した背景の一つとして、こうした同党の内政重視戦略が挙げられている。

 このためバイデン大統領も、もし来年選挙への出馬を正式表明した場合、過去の経験から、得意の「サードレール・ポリティックス」を展開することは確実だ。 

 ただ、共和党との対比でことさら「社会福祉充実」を声高に叫び続けた場合、かえって民主党支持者含め多くの現役サラリーマン階層の反発を招くことにもなりかねない。

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