これら近年の傾向は、過去4回の大統領選挙における民主、共和両党間の有権者投票総数の差にもそのまま反映されている。
08年選挙では、民主党・バラク・オバマ候補の得票総数が6949万8515票だったのに対し、共和党・ジョン・マケイン候補が5994万8323票となり、オバマ候補が955万192票の大差で当選した。
12年選挙では、再選めざすオバマ氏が6591万5795票を獲得、これに対し、共和党・ミット・ロムニー候補は6093万3504票となり、498万2291票の差をつけてオバマ氏が再選を果たした。
16年選挙では、民主党・ヒラリー・クリントン候補の6585万3514票に対し、共和党・ドナルド・トランプ候補は6298万4828票を獲得、クリントン候補に286万8686票もの差をつけられた。ただ、大統領選挙人獲得総数ではトランプ候補が上回ったため、当選した。
20年選挙では、民主党・ジョー・バイデン候補が8126万8867票を獲得したのに対し、再選目指したトランプ氏の票は7421万6747票にとどまり、バイデン候補が705万2120票もの差をつけて当選を果たした。
大統領選挙問題に詳しい専門家の間では、とくに、20年大統領選挙で現職の強みを発揮できたはずのトランプ氏が、700万票以上もの差をつけられて敗れたことについて、個人的資質の問題だけにとどまらず、共和党の伝統的体質がリベラル化の進む時代の流れに後れを取っていることが影響しているとの見方が少なくない。
共和党が練り直す選挙戦略
こうした中、来年大統領選に正式出馬表明したトランプ氏が今月、不倫もみ消し疑惑に関連して、ニューヨーク州マンハッタン地区検察局に「34の罪状」容疑で起訴された。
トランプ〝岩盤支持層〟は、この起訴について「法に依拠しない民主党の政治的弾圧」だとして強く反発、大統領選挙に向けた政治資金集めの呼びかけ運動が広がり始めている。米マスコミの多くも、トランプ陣営が、今回の起訴を逆手に取り、来年に向けた選挙戦に弾みをつけようとしている、と報じている。
ただ、かりにトランプ氏が共和党各層の支持を広げたとしても、一般国民の受け止め方は、極めて穏当だ。
CNNテレビが「トランプ正式起訴」が明らかにされた直後の去る4日、公表した世論調査結果によると、「起訴支持」が62%だったのに対し、「不支持」は全体の38%にとどまった。党派別に見ると、民主党層の94%が「支持」だったのは当然としても、共和党層の間でも21%が支持表明している。
また、トランプ氏に対する「好感度」については、全体の34%だった。
トランプ疑惑については今後、今回の不倫もみ消し事件のほか、①20年大統領選挙結果をめぐる妨害・介入、②ホワイトハウス機密文書不法持ち出し・保管、③トランプ支持派による連邦議事堂襲撃・乱入事件――などの州、連邦レベル捜査も大詰めを迎えつつある。もし、これらの事案についても、起訴された場合、一般国民のトランプ批判がさらに加速する可能性も十分ある。
一方で、24年大統領選については、トランプ氏がこのまま予備選を通じ共和党指名を獲得し11月本選に臨んだ場合、かりに不人気を理由に有権者総得票数で民主党候補に水を開けられたとしても、当選の道が閉ざされるわけではない。16年選挙で証明された通り、勝敗を決定づける大統領選挙人獲得数でホワイトハウス・カムバックの可能性が十分残されている。
このため、共和党陣営としては、これまでの各種世論調査に反映されるような一般社会状況の諸相の変化が同党に不利に働くとしても、なんとか政権奪回に向け、全米50州にまたがる大統領選挙人マップに焦点を当てたより周到な選挙戦略の検討を余儀なくされることは確実だ。