2024年11月1日(金)

World Energy Watch

2023年6月22日

 今年4月の乗用車販売に占めるBEVとPHEVのシェアは、それぞれポーランド3.5%と3.3%、チェコ2.6%と2.0%、ブルガリア3.7%と0.6%、エストニア5.8%と1.6%、ギリシャ4.5%と4.2%、スペイン4.6%と5.8%だった。

 所得がEV導入の壁になっているようだが、35年に原則EV化を目標とする欧州委員会の自動車部門の脱炭素計画により、今後EVは中東欧諸国にも広がり販売台数は増加を続ける。その結果、今も増え続けている中国製EVの輸入台数が増加するのは必須だ。

EVで欧州内のシェアを奪う中国

 今年第1四半期の中国の自動車輸出台数が日本を抜き世界一になったと報じられた。日本95万4000台に対し、中国107万台だ。この背景には中国製EVのEU向け輸出増がある。

 図-3が日本、韓国、中国のEU向け自動車輸出台数の推移を示している。日本車は現地生産の影響もあるのか減少している。中国からの輸出が日本、韓国を上回ったが、輸出車の大半はEVだ。

 ドイツBMWのSUVのEV iX3は中国工場で製造されている。テスラも上海工場からEU向けにモデル3とモデルYを輸出している。ボルボ傘下のポーラスター、ルノー傘下のダチアのEVも中国で製造され、輸出されている。中国企業SAICの傘下にある英国MGのEVも中国から輸出されている。

 この勢いで中国市場においてEVが伸び、加えて中国製EVの欧州向け輸出が増えれば、欧州経済に大きな打撃を与えると、警鐘を鳴らす企業も出てきた。

 ドイツ・アリアンツグループは、研究レポート「欧州自動車業界への中国の挑戦」(The Chinese challenge to the European automotive industry (allianz.com))の中で、EVシフトの最大のリスクは中国と次のように指摘している。

・中国は15年前に、EVの可能性を認識し莫大な資源を競争力のあるEV製造につぎ込んだ。中国車ブランドの国内シェアは、20年の40%から22年50%に上昇した。欧州で最も売れるBEVの3ブランドは中国からの輸入になった。

・仮に中国メーカーが国内シェアを30年までに75%に伸ばすと、欧州メーカーの中国での販売は39%減となり、年間70億ユーロ(約1.1兆円)以上の純利益を失う可能性がある。

・仮に中国車のEUへの輸入台数が30年に150万台に達すると、EUの22年生産台数の13.5%に相当し、30年の付加価値額への影響は、22年GDPの0.15%に相当する242億ユーロ(約3.7兆円)になる。

 中国EV車への対策として、公平な交易条件、欧州内での現地生産、バッテリー用重要鉱物の欧州内生産、次世代バッテリーの開発が挙げられているが、実現は簡単ではない。

 仮にEV生産を自国で進めることができても、重要鉱物で大きなシェアを持ち、サプライチェーンを構築している中国企業の手から逃れることは簡単ではない。蟻地獄のようだ。


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