2024年5月18日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年7月9日

創立160周年の南半球最古のクリケット・クラブ

サウスランド・クリケット・連盟のクラブハウスはコロニアル様式

 3月5日。南島南部(サウスランド地方)の中心都市インヴァ―カーギル。広大なクイーンズ・パークを散策。敷地内に小川が流れ36ホールのゴルフコースもある。ローズガーデンから森の小径を抜けると広々とした芝生のクリケット・グランドに出た。グランドの向こうに白い瀟洒な建物が現れた。木造2階建ての広いバルコニーが特徴のコロニアル様式のクラブハウスだ。

 芝生では白いユニフォームを着た選手がクリケットの試合をしていた。試合を見物していると時間がゆっくりと流れる。まるで大英帝国植民地時代にタイムスリップしたようだ。

 このサウスランド・クリケット・クラブは1892年創立。クリケットは日本ではあまり馴染みがないがオーストラリア、インド、パキスタン、南アなど英連邦諸国(Commonwealth)では大変な人気だ。インド、パキスタンでは国技となっている。NZはクリケット・ワールドカップでも近年優勝を争いの常連という強豪国だ。

 ちなみにダニーデンにあるアルビオン・クリケット・クラブは1863年創立。『南洋州(Australasia)で最古の現存するクリケット・クラブ』、つまり豪州・NZ・ニューギニア・ニューブリテンなどの南半球の旧大英帝国領の中で最古であると誇らしげにクラブハウスに書いてあった。

19世紀末スコットランド系植民者が創設したラグビー・クラブ

試合前のミーティング、そろそろ辺りは薄暗くなってき

 3月7日。南島最南端の港町ブラフから国道1号線を43キロ北上。午後4時、肉屋とガソリンスタンドがあるだけのウッドランズという集落に到着。

 雨が降りだしたのでどこかテントを張れるところはないかと肉屋のお姉さんに相談するとラグビーのクラブハウスを勧めてくれた。鉄筋コンクリートの平屋のクラブハウスの軒下にテントを設営してミートパイと牛乳で夕食。ラグビーグランドが2面ある広大な敷地だ。午後5時を過ぎ雨も止んで夕日が美しい。

 1台のピックアップトラックが来て大柄の青年が挨拶。クラブのメンバーらしい。スパイクを履くとグランドを走りだした。そのうち三々五々と車に乗ってメンバーが集まってきた。仕事や学校帰りのようだ。コーチらしい中年男性に「クラブハウスの軒下のテントで一泊したい」と申し出ると「クラブハウスへの出入りに邪魔にならなければOK」と快諾。

 ワゴン車がクラブハウスの玄関前に停まり、男たちがビール瓶の入ったケースを運んで巨大な冷蔵庫に収めた。6時半を過ぎると50人近い男たちが2つのグランドに分かれてパスやタックルの練習を始めた。隣町のチームとの練習試合らしい。選手たちの年齢は高校生から40代前半くらいまで幅広い。予備軍の中学生くらいの子供たちも練習に参加している。

 7時過ぎに試合開始。ラグビーの本場らしくプレーがスピーディーだ。そのうちに夜間照明が点灯されて芝生がキラキラ光る。疲れたので試合途中で8時半頃テントにもぐる。なにやら賑やかな話し声に目を覚ますと9時を過ぎている。試合後に両チームの選手やコーチがクラブハウスでビールを飲んで交歓しているようだ。

 ウッドランズは現在人口わずか270人、110世帯の小さな村だ。“ウッドランズ・ラグビー・フットボール・クラブ”は昨年創立125周年を祝ったという歴史を誇る。1897年創立なのだ。サウスランド地方は19世紀半ばにスコットランド系移民により本格的に植民が開始されたと地元民に聞いたがクラブ創立時の村の人口は100人にも満たなかっただろう。

 NZをチャリで走っているとほとんど人家がないような辺鄙な場所にもこうしたラグビー・クラブが必ずあることに驚く。オール・ブラックスの栄光を支えているのは大英帝国由来のこうした草の根の地域クラブの伝統なのだ。

ウッドランズ・ラグビー・フットボール・クラブのクラブハウス

第7回に続く

   
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