気温40度近い猛暑が続いていた7月末のある日──。午前11時、東京都内の大型ビル建設現場の地下で、黙々と鉄筋を運び続ける2人のフィリピン人実習生の姿があった。
地下の現場は地上にも増して蒸し暑い。じっとしていても、全身から汗が滲み出してくるほどだ。
「暑いでしょ? 大丈夫?」
実習生の1人で、日本で働いて5年目になるエーロン・ガンゴソ・アロハドさん(38歳)が、われわれ取材班を気遣って声をかけてくれた。エーロンさんには数日前、所属先の会社で話を聞いていた。
建設現場の仕事は、大工や土工、鉄筋工、とび、左官、内装など多くの職種に分かれている。エーロンさんは鉄筋工で、この現場の仕事を会社が請け負い、派遣されている。
鉄筋工の役割は、建物の基礎である「躯体」の骨組みとなる鉄筋を組むことだ。現場によっては鉄筋の重さは40キログラムを超える。普段から筋トレで鍛え、ベンチプレスでは選手並みの200キログラムを上げるエーロンさんであっても、長時間の仕事は楽ではない。
「鉄筋を運ぶだけなら大丈夫。ただ、腰はきついですね」
この日、エーロンさんとタッグを組んでいるのは、今年6月に入社したばかりのフィリピン人実習生、ダホトイ・フェリペ・ネポムレノさん(33歳)だ。周囲で足場作りをしているとびにも、実習生らしき外国人が目立つ。
「ここの現場では1000人くらいの職人が仕事をしていますが、200人ほどは外国人実習生じゃないですかね。大規模な現場は、どこもだいたいそんな感じです」
現場を案内してくれたエーロンさんの日本人同僚はそう話す。
近年、建設業界では現場を担う職人の不足が著しい。実習生をはじめとする外国人労働者抜きでは、もはや仕事が回らない状況なのである。
募集に200万円かけても
人が集まらない
エーロンさんたちが所属するのは、東京・八王子市の鉄筋工事専門会社「みのわ」だ。同社の箕輪武志代表取締役(51歳)は、人手不足の実態をこう話す。