2024年5月14日(火)

田部康喜のTV読本

2023年9月25日

 馬場ふみかの「私の胸にしまっておいてもいいんですよ」という言葉が気になった松下は、自らの身分は明かさずに「あざとくて何が悪いの?」の出演者である田中みな実に相談する。それは恋心と断定して「松下君、がんばって!」といって部屋を出るのだった。

 翌日、松下は決心して馬場ふみかに言葉の意味を尋ねた。すると、馬場は子役の子を呼んで、たまたまTik Tokを撮っていたときに佐藤浩市が携帯電話で話していた内容を告げるのだった。佐藤は松下を「モグラだ。最初から気づいたいたが」といっていたという。

 馬場も子役も「もぐら」が潜入捜査官を示す隠語だとは思わずに、松下の演技に対する悪口だと思っていたのだった。

 ドラマは前半、松下の視点から描かれ、同じ場面で後半は佐藤浩市の視点から描かれている。サスペンスの常道である。

 最終回の佐藤浩市と松下洸平のその後の人生を暗示させているハッピーエンドもいい。さらに松下が芸能界で潜入捜査を続ける次のターゲットも示されて、続編を期待させるところもよくできている。

デジタル時代のテレビ局

 「TVer」初の制作ドラマにメディアの焦点が当たっているのはちょっと惜しい。民放キー局が共同制作となると、ドラマ性もなかなかのものである。

 インターネットの急速な普及によるデジタル革命の潮流にメディアは悪戦苦闘してきたし、いまもそうだ。「TVer」がキー局主導によって開始されたのは2015年10月のことである。各局がドラマやバラエティを無料配信すると同時に各局に時差があったが、自社の有料サイトを構築していった。

 地上波の番組はすでに配信時間に観るのが主流とはいえなくなっていた。「タイムシフト視聴率」である。つまり、録画装置で2週間分録画して空いた時間に「倍速」でドラマを観るのが若者を中心として当たり前になってきた。

 YouTubeなど他の映像も観たいからである。視聴率調査会社のビデオリサーチが「タイムシフト視聴率」のデータ提供を始めたのは15年1月からである。


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