2024年5月17日(金)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2023年10月5日

 この秋の臨時国会は10月20日に召集される予定だが、これが仮に12月半ばまで続くとする。この8週間に死なないためには、月曜から木曜までの4夜は泊まり込む。そして、週末3泊と祝日は、自宅で眠る。

 平日に無理に自宅に帰れば、往復の通勤でただでさえ少ない睡眠時間が奪われる。目標は殉職しないことなので、そのためには、他を犠牲にする。家族がいる場合、「死ぬよりましだ」と言って理解を求めるしかない。

 田中さんの場合のように、夜の仕事は1時半に終わり、朝は7時半から、というのなら、泊まり込めば6時間は眠れる。中央官庁というところが、どの程度仮眠室を用意しているかわからないが、なければ、自分で泊まり込み環境を整えるしかない。NHKのWEB記事では、「即席ベッド」と称して椅子を2つ並べて靴下も脱がない姿が映し出されているが、これでは眠れない。仮眠室が満室・満床なら、床に寝るしかない。

 こういうと驚かれるかもしれないが、すべてはサバイバルのためである。毛布、タオルケット、寝袋等に加えて、断熱性とクッション性に優れた登山用スリーピングマットを常備しておきたい。登山用品店で買ってもいいし、通販でも手に入る。

 周囲に徹夜で仕事をしている人がいるかもしれないので、アイマスク、耳栓も準備したい。ワイシャツは、ネクタイさえ外せば、そのまま寝巻になるが、ズボンはしわになるから、はいたまま寝るわけにもいかない。ズボンだけは短パン、ジャージ等、寝巻用のものを一本もっていく。替えの下着、靴下、最低限の洗面道具も常備しておく。

 職場に登山部出身者がいたら、助言を得るのもいい。登山家たちは、マット越しに凹凸を感じるような条件の悪いところでも眠る。それにくらべれば、まったく凹凸のない床にマットをしけば、十分快適な寝床が出来上がる。こうして、6時間の夜間睡眠を確保する。

 そして、日中の予定をよく見て、仕事の合間に15分以上のブランクが発生する時間帯を血まなこになって探す。その時間が来れば、アイマスク、耳栓を活用する。日中は床にスリーピングマットを敷くわけにはいかないだろう。その場合、バスタオル2、3枚を丸めて、卓上枕にして、机で眠る。

 結果として、夜間6時間、日中15分×2、3回の睡眠を確保できる。これだけ眠れば、ある程度、休息効果は出るから、死ななくてすむかもしれない。

 月曜夜から金曜朝までこの生活とし、週末は自宅に3泊して、まともな睡眠をとる。会期中、11月3日からの3連休があり、11月23日の祝日もある。この間は睡眠負債の解消のための長時間睡眠に充てる。

官僚の激務は人権問題

 「エリートの官僚に向かって『床で寝ろ!』とは、何ごとだ!」という人がおられるだろう。その通りである。心よりお詫び申し上げる。しかし、最後まで聴いてほしい。エリートに3時間半睡眠を強いていることの方が、はるかに重大な人権侵害なのである。

 本稿をお読みの官僚の方に申し上げたい。この秋の臨時国会に〝殉職者〟が出るかもしれない。あなたが、その一人にならないことを祈る。

   
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