2024年5月20日(月)

「永田町政治」を考える

2023年10月15日

 「小池さんが準備万端で選挙に臨んでくる。それならば先にこちらから仕掛けてやろう、という判断でした」「権力闘争のパワーゲームでは、私が不意を突いて解散というカードを切った……」(同書、267-268頁)など、小池百合子東京都知事が結成した「希望の党」を意識した解散だったことはっきりと認めている。

 政局優先だけの判断ではもちろん、なかったろうが、これだけはっきりと「パワーゲーム」などといわれると、思わず鼻白む。投票所に足を運んで清き一票に投じた有権者はどう感じるだろう。

強大な解散権は「首相の専権事項」か

 第2の視点、解散権という強大な権限を首相一人に与えていいのかという指摘に頷く有権者も少なくあるまい。

 解散権は「首相の伝家の宝刀」「首相の専権事項」などと言われるが、日本国憲法にはそうした規定はない。

 不信任案の可決、信任決議案の否決、天皇が国事行為として解散するときは、ぞれぞれ「内閣は衆議院が解散されない限り総辞職」(69条)、「内閣の助言と承認により」(7条)とあり、解散権はあくまで内閣にある。しかし、総理大臣は「内閣を代表し・・行政各部を指揮監督する」(72条)という規定があるから、事実上の問題として首相の意向が強く反映される。

 05年の小泉純一郎内閣による郵政解散の際、当時の島村宜伸農林水産相が反対し、小泉首相は農水相を罷免、自らが兼任して内閣の形式を整えて解散詔書に署名したことがある。

 極端な話、閣僚全員が反対しても首相が全閣僚を兼任して解散を断行することが可能だ。制度が違うとはいえ、世界一の権力者、米国大統領でさえ持たない強大な権限というべきだろう。

 第3の視点、7条解散の是非については、学界でも議論されたことがある。

 衆院解散の際、本会議で議長が朗読する詔書には「日本国憲法7条により衆議院を解散する」とだけ記されている。

 内閣不信任案の可決を受けての解散なら69条、7条による解散だから問題はないが、7条単独での解散なら、天皇が自らの意思で解散を断行したという印象を与えないかという疑義だ。これまでも内閣に対して、この問題での質問主意書が提出されたことがある。

 微妙な問題ではあるが、憲法では、天皇に「政治的権能を有しない」(4条)とはっきりうたわれていることから、天皇が「内閣の助言と承認」によって解散を宣することに問題はないというのが学説上の通説であり政府見解でもある。

 しかし、7条解散に対する疑念は長く指摘されてきた問題であり、政治的に反対勢力を直ちに納得さることは困難だろう。


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