2024年5月16日(木)

田部康喜のTV読本

2023年11月10日

 蔵前の事件現場の聞き込みによって、被害者の財布は路上生活者の男性が取得したことがわかった。さらに、横断歩道でもつれ合うようしていたのは、目撃者によると、被害者と女性であることが明らかになった。被害者はメジャーデビュー直前の藍子の交際相手だった。

弁護士として成長する姿

 事件の裁判員裁判。上記のような証言をもとに、山崎と杏は被告の木原は無罪だと主張した。

 証言席からひとりの女性が立ち上がった。藍子である。「(被告の)木原さん、私をもうかばわなくてもいいから。わたしがやりました」と。

 閉廷後、藍子が登場したことが不思議そうな杏に対して、蔵前は「ただ、木原さんの裁判の日時を教えただけですよ」と。

 事務所内のメンバーの名前すら覚える気がなかった杏が、蔵前がノートにメモを取ることを教えたことから徐々に変わっていく。コミュニケーションが取れない天才弁護士の成長物語が、このドラマのひとつの糸である。もうひとつの糸はいずれ明らかになるのだろう。

 杏の年の離れた異母姉である天野さくら(江口のりこ)が杏に会うたびに「あんたは弁護士なんかやってはいけない」という謎である。

 ムロツヨシが相手の女優に寄り添いながらも、独特のコミカルな味わいをだしているのもドラマの魅力である。大ヒットドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」(2018年、TBS)では、記憶が薄れていく妻役の戸田恵梨香にラストシーンで自分の小説を読み聞かせていると、戸田が一瞬記憶を取り戻すシーンは忘れがたい。

 天才パフォーマー・平手友梨奈の新たな魅力を引き出してくれるだろう。

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