2024年12月22日(日)

田部康喜のTV読本

2023年11月10日

 「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ・金曜よる9時)は、ヒロインに天才パフォーマーの平手友梨奈を弁護士役に起用して、大物女優のマネジャーを解雇されたムロツヨシがパラリーガル役を務める傑作社会派コメディである。

(Svetlana Shamshurina/Olga Kurbatova/ZillaDigital/AzFree/gettyimages)

アイドル、女優として歩む平手

 平手友梨奈は欅坂46(現・櫻坂46)のセンターを14歳で抜擢され、そのまま2020年に脱退した。プロデューサー・秋元康が手がけたグループのなかで唯一センターのままで転身した。ダンスと歌唱のみならず、女優としての演技力も含めて最高のパフォーマーのひとりである。

 アーティストとしての平手を含む欅坂46に対する敬意を払わず、〝色物〟扱いをしたのは、17年暮れの紅白歌合戦において、「不協和音」のパフォーマンスに総合司会の内村光良が加わった際に平手を含む3人が過呼吸で倒れた事件だった。過呼吸はストレスによって生じる。50歳を超えた内村にメンバーがダンスと歌を合わせるのはいかに過酷なことだったか。

 欅坂46の活動を追ったドキュメンタリー「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」(2020年、高橋栄樹監督)では、パフォーマンスを終えた平手が「私は欅坂46とこれから距離を置く」「みんなは欅坂46をやっていて楽しい?」という言葉を音声で拾っている。

 欅坂46はドキュメンタリーのタイトルのように歌詞に「僕」を使っている。孤独な若者たちに他人と合わせる必要はない、とメッセージを送っている。

 日本の歌謡曲には、歌詞でうったえるものと踊り系がある、と分析したのは作曲家の小林亜星だった。「アイドルを超えろ」と秋元康が結成した欅坂46はそのふたつを融合させたうえにメッセージを加えた稀有な存在だった。


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